参議院選挙が近づいてきたが、日本の現状は若者にとってますます厳しいものになりつつある。そんな状況を変えるには、若者自身が選挙に行くしかないと作家の落合信彦氏は指摘する。
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日本は内政でも外交でも様々な課題に直面し、社会のあちこちでシステムが金属疲労を起こしている。残念ながらほとんどの老人たちにはそれを変える力がないし、変える意欲もない。
国会中継を見れば、議論されているのは年金、介護など「どうやって未来ある若者から富を吸い取るか」というテーマばかりだ。だから参議院選挙を前に若者たちに一つ言いたい。君たちの投票率が上がらなければ、そうした現状は絶対に変わらない。
もちろん、日本の政治家は若者たちより一層罪深い。選挙となれば聴衆の前で涙を流し、支援者に土下座をすることで票を集めようとする候補者までいる。海外の選挙でそんな光景は見たことがない。当選して議員となれば国内でも海外でもタフなネゴシエーションを求められる。
選挙戦は本来、候補者が有権者にそうした交渉で勝ち抜く資質をプレゼンテーションする場のはずだ。アメリカの大統領選挙で候補者同士のディベートが最重要視されるのはそのためである。言葉遣いが適当か、相手の挑発に易々と激高しないかなどが厳しくチェックされる。土下座で選挙に通った人間は、厳しい交渉事でも土下座しかできないだろう(実際、日本の一部の国会議員は“土下座外交”がとても得意だ)。
また、力強い言葉で理想や未来を語って支持を集めようとする政治家もいない。これは若者の投票率が上がらないことと密接な関係がある。
今回の自民党の公約を見ていると「なんとか失点を避けたい」という守りの姿勢ばかりが透けて見える。閉塞感を打破する大胆な改革など期待できるはずもない。政治家が理想や夢を語らないから、若者は政治への関心を失っていく。若者が投票に行かないから、政治家は理想を語る必要性を感じない。この最悪のスパイラルをどこかで断ち切らなければならない。
※SAPIO2013年8月号