国内

池上彰「効果不明のアベノミクスは小泉政権を見て評価せよ」

 いよいよ目前に迫ってきた参院選。あまり政治に興味がない…という人にもわかるように、池上彰さんが今回の選挙のポイントを解説する。「今回の選挙の争点は、安倍政権を信任するか、しないか」だという池上さん。特に判断のポイントとして重要なものが「アベノミクス」だという。

 * * *
 アベノミクスというのは、安倍政権が打ち出した景気回復のための経済政策です。この政策には、3本の矢と呼ばれる3つの分野があります。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」そして「民間の投資を引き出す成長戦略」です。前の2つは要するに「ミニバブルを起こす」「バラマキ」といったショック療法で、最後の1つは「日本経済の体質改善」といえるでしょう。

 効果が早く出るのは、ショック療法です。みなさんもご存じの通り、長らく1万円を割っていた株価は安倍政権発足後に上昇し続け、今年5月にはなんと5年4か月ぶりに1万5000円台にまで達しました。今は乱高下していますが、株で儲けたという個人投資家の声も聞かれます。円安の恩恵を受けた輸出業界では、夏のボーナスが増えたという会社もあります。

 しかし、収入が増えていない人もまだまだたくさんいます。安倍政権は非正規労働者を「限定正社員」と呼ばれる、勤務地や労働時間を限定した正社員へと転換させる策を進めようとしていますが、これは企業が社員を解雇しやすくすることにつながる、という見方もあることから、先行きが不安というかたもいるでしょう。

 それなのに、アベノミクス効果の円安のおかげで、輸入に頼っているエネルギーのほか、パンや食料油など身近なものまで、早速値上がりが始まっています。

 こんなことならアベノミクスには反対、でしょうか。安倍総理は、「ちょっと待ってほしい」と言っています。アベノミクスの効果が充分に広がって、みなさんのご家族のお給料も上がるまでには、少し時間がかかるんだということのようです。

 まだわからない先のことを、21日の投票日までにどう評価すればいいか。参考になるのが、過去に起きてきたこと。

 たとえば、小泉政権時には、よく「痛みを伴う改革」「構造改革なくして景気回復なし」という言葉が使われました。改革とはたとえば、郵政民営化や道路公団の民営化など、政府による公共サービスを、どんどんと民営化し、民間にできることは民間に任せる、というものです。民営化の瞬間は確かに痛いかもしれないけれど、少し我慢をすれば、いずれ痛みがなくなるうえに、前よりも景気はよくなるんだといわれていました。

 その結果、どうなったか。景気は良くなったでしょうか。一部にはよくなった人もいたかもしれませんが、悪くなった人も多かった。格差が広がったというわけです。

※女性セブン2013年8月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン