国際情報

「日本の中枢3人が右傾化している」が米の論調と大前研一氏

 韓国の朴槿惠大統領は、歴代大統領で初めて日本より先に中国を訪問した。中韓が連携を深める一方で、日本は孤立しつつあるのか。大前研一氏が現状について解説する。

 * * *
 新しい時代が幕を開けた。その象徴こそが、尖閣諸島をめぐる日中の対立についてオバマ大統領が「緊張緩和を求め、行動ではなく外交チャンネルを通じた対話で解決すべきだ」と発言したことである。その場で習近平主席は、尖閣諸島は中国にとって台湾やチベットなどと同様に譲れない「核心的利益」だと表現し、「主権と領土をしっかり守る」と主張したと報じられている。

 菅義偉官房長官は、米中首脳会談開催時のテレビ番組で「日本の考え方はアメリカに伝えている。そこはしっかり主張してもらえる」と述べ、オバマ大統領が尖閣諸島問題で日本政府の立場を踏まえて発言するとの見通しを示していた。

 ここでの「日本の考え方」とは、「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり、現に我が国はこれを有効に支配している。尖閣諸島をめぐり解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」というものである。つまり話し合うテーマではない、というのが日本の立場なのだ。

 ところが、オバマ大統領は「領有権の問題」を「話し合うべき」と述べた。ということは「日本の考え方」は、オバマ大統領には全く伝わっていなかった可能性が高いのである。これは極めて大きな日米間のギャップであり、由々しき事態と言わざるを得ない。

 悲劇的なのは、この国のトップにそうした認識がないことだ。

 日中首脳会談の翌週、安倍晋三首相はオバマ大統領と電話会談し、日本の立場を踏まえた対応をしてくれたことに感謝の意を示したうえで「中国と協議するドアは常に開いている」とまで語った。歴史的にも国際法的にも「日本の領土」であることが明らかな尖閣問題が米中首脳会談の俎上に載ることだけでも屈辱的なのに、「話し合うべき」としたオバマ大統領に謝意を示して“はい、話し合います”と答えるとは、安倍首相の外交センスに大きな疑問符が付く。

 中国抑え込みをアメリカ頼みにしている一方で、安倍首相は国内では中国や韓国に強い姿勢を見せる内弁慶ぶりが際立っており、それがかえってアメリカで「ストロング・ナショナリスト(強硬な国家主義者)」と警戒される原因になっている。「安倍、石原(慎太郎氏)、橋下(徹氏)の日本の中枢3人」が右傾化しているというのがアメリカの最近の論調で、私はG8での日米首脳会談見送りはこのことが関係しているとみている。

※SAPIO2013年8月号

関連キーワード

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
2週連続優勝を果たした 竹田麗央(時事通信フォト)
女子ゴルフ 初Vから連続優勝の竹田麗央(21) ダイヤモンド世代でも突出した“飛ぶのに曲がらない力”
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン