国際情報

中国「影の銀行」 GDPの55%、約462兆円に及ぶとの試算も

 参院選前日の7月20日に閉幕したG20財務相会議の共同声明の中に注目すべき項目がある。中国の不透明な金融取引である「影の銀行(シャドーバンキング)」問題の規制・監視の強化を要請したことだ。大手証券会社の経営幹部がこう指摘する。

「『影の銀行』の問題はG20開催前から各国金融当局の関心を集めていた。対策を誤れば“第2のサブプライムローン危機”となる、つまり世界的な経済危機のトリガーになりかねない。影の銀行は、リーマン・ショック後に世界経済を引っ張ってきた中国のバブル経済の源泉であって、放置しても規制しても、いずれにせよバブルは崩壊する。極めて深刻な問題だ」

「影の銀行」とは、ごく簡単にいえば、当局の規制下にある通常の銀行とは異なる金融業態の総称だ。一部には、日本でいえば“闇金融”に近いものもある。金融機関や財政面で余裕のある企業は、影の銀行を通じて、信用力の低い中小企業や事業に高金利でお金を回すことができる。

 製造業などの実業ではなく、投資先行で成長してきた中国経済の原動力として、影の銀行の規模は特にリーマン・ショック以降に急拡大。中国メディアによると、2007年以降に約20倍に膨らんだという。影の銀行の融資手段は主に2つある。

 1つ目は「理財商品」と呼ばれる財テク金融商品だ。運用会社が組成して、銀行窓口で販売され、主に個人が購入する。集まった資金は、中小企業や、不動産やインフラ開発を行なう地方政府のダミー会社「融資平台」に融資される。

 2つ目は「委託融資」と呼ばれるものだ。お金が余っている大手国有企業が余剰資金を銀行に預金し、そのお金が銀行の紹介で中小企業や「融資平台」に融資される。金融ジャーナリスト・永山卓矢氏が解説する。

「委託融資は事実上、銀行の“迂回融資”であるケースが多い。まず銀行が大手企業に非常に安い金利で過剰融資をします。そのカネは本業の設備投資には回されずに、銀行に預けられることになる。それが高金利で中小企業や『融資平台』に融資されるやり方です」

 いずれにせよ、融資先である中小企業は信用力が低く、地方政府は無謀な開発を行なっているため、将来、焦げ付く危険性が非常に高いのだ。

 影の銀行は、まさに「地下経済」。実態や規模は中国政府でも正確には把握できない。国際通貨基金によれば国内総生産の55%(約462兆円)とされ、米金融大手のJPモルガン・チェースによると、36兆元(約580兆円)ともいわれる。

 中国問題評論家で拓殖大学客員教授の石平氏が話す。

「たしかに影の銀行が中国の成長を支えてきた面は否めません。しかし、それが泡のように膨らみ、膨大な不動産在庫と企業の生産過剰を生み出してきた。危険水域はとっくに超えている。迫り来る影の銀行の破綻により、中国経済は果てしない転落に陥るでしょう」

※週刊ポスト2013年8月9日号

関連キーワード

トピックス

真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
優勝11回を果たした曙太郎さん(時事通信フォト)
故・曙太郎さん 史上初の外国出身横綱が角界を去った真相 「結婚で生じた後援会との亀裂」と「“高砂”襲名案への猛反対」
週刊ポスト
伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン