とにかく記録づくめの酷暑である。
高知県四万十市は4日連続の40度越え。国内の観測史上もっとも高い41度まで叩き出してしまった。東京でも明治8年以降2番目となる“最高の最低気温”30.4度を記録した。8月5日~11日のわずか6日間に熱中症で救急搬送された人は9815人。前週の3倍以上に膨れ上がった。
こうも暑ければ室内のクーラーはフル稼働。外気温との差は広がるばかりだが、そこで注意したいのが「クーラー(冷房)病」だ。
医学博士で新渡戸文化短期大学学長の中原英臣氏がクーラー病について解説する。
「冷房の効いた室内と気温差がある暑い屋外との出入りを繰り返すことによって、体温を下げる交感神経と体温を上げる副交感神経のバランスが崩れます。そうなると、疲労感、頭痛、食欲不振、不眠、下痢など自律神経失調症に似たような症状が現れる。これがいわゆるクーラー病の症状です」
体温調節がうまくできずに体がずっと気だるかったり、原因も分からず肩凝りがひどくなったりして、体調不良のお盆休みを過ごしている人もいるだろう。これらも典型的なクーラー病の症状である。
だが、そのまま放っておけば、盆明けの職場復帰に深刻な影響をもたらすこともある。
「自律神経の機能を乱さないようにするには、規則正しい生活を心掛け、ストレスを溜めないことが大切。でも、連休で生活リズムが崩れているうえに、温度差によるストレスがかかっている。そのまま休み明けで職場に行けば、今度は精神的、時間的ストレスを受けることになり、うつ状態になる人が増えるかもしれません」(前出・中原氏)
いま、余暇の時間は元気なのに仕事中はうつになる、通称「新型うつ」が社会問題になっている。単なる休みボケの憂鬱ならいいが、自律神経の乱れで体が異常をきたしているうつ状態は、ひどくなると他の様々な病気を引き起こす場合もある。
では、うつの原因にもなるクーラー病を防ぐにはどうしたらいいか。
「クーラーの設定温度は外気温との差を5度以内に抑えたいところですが、いまの猛暑では無理でしょう。できれば27、28度で凌ぐのが理想です。また、一度クーラーのある部屋に入ったらできるだけ外出を控え、1日に2~3回にとどめたいですね」(中原氏)
夏が終われば日照時間が次第に短くなり、体内時計が狂うことで起きる「季節性うつ病」が増えるといわれている。気候の変化は避けようもないが、少しでもストレスフリーな日々を送り、まずは厳しい夏を健康に乗り切りたい。