法人税の引き下げが議論されているが、そもそも納めている法人はたったの3割しかない。個人事業主の所得税も払っていない人が少なくない。その問題点を政策工房社長の原英史氏が指摘する。
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国税庁データによれば、課税対象の全法人257万社のうち、赤字法人は約7割の186万社(2011年)。法人税は、法人の「所得」に対して課されることが基本で、所得とは「収入-損金」で計算される。いくら収入が多くても、それを上回る経費が計上されていれば、税金はかからない(均等割の地方税などを除く)。つまり、我が国では前述の免税法人を除いた上で、さらにそのうちのたった3割の法人しか法人税を払っていないわけだ。
この問題は法人税だけでなく、個人事業主の所得税とも重なる。昔からクロヨンといった言葉があるように、サラリーマンに比べ、個人事業主や零細企業オーナーは経費としてさまざまな費用を計上することができるため、税金をあまり払わずに済むとの指摘が根強い。高級車を「営業用自動車」として経費計上するなど、本当に事業の経費なのか疑わしいケースも少なくないからだ。
それに対し、サラリーマンの場合は所得がマイナスになるといったことは基本的にあり得ない。経費は実際にかかった額とはかかわりなく、給与額に応じた「給与所得控除」が差し引かれるのが原則。スーツや資格取得費などの必要経費を実額で計上できる制度が拡充されてきたが、実際にはなかなか適用されない。
税金の問題というと、つい税率にばかり目を向けがちだが、その前に税金を払うべき人たちが本当に税金を払っているのかどうか、改めて見直すべきだ。
※SAPIO2013年11月号