スポーツ

草野仁「SNSより顔あわせたほうが絶対に多く情報得られる」

 穏やかな語り口とほほえみで知られるキャスター、司会者の草野仁氏は、NHK時代はスポーツ実況アナとしても活躍していた。オリンピックをはじめ様々な大会で多くの実況をした草野氏自身も子どものころから運動が得意で、いまもウエイトトレーニングを欠かさないという。みずから体を動かすことをいとわない草野氏に、メールやSNSなどネット情報に偏りがちな現代のコミュニケーションについての意見を聞いた。

──現在のネット社会では「情報」は大量に入手できる。メールやSNSなど、コミュニケーションのチャンネルも多様化している。

草野:ウィキペディアなど、ネットからは簡単に情報を入手できます。しかし、それは皆が同じように入手できますので、他と差別化できません。情報の表面をなぞって終わりということにもなりかねません。

 NHKに勤めていた1971年、福岡国際マラソンの中継の準備のために、フランク・ショーターというアメリカの選手に話を聞きにいったことがあります。もちろん、彼の話を聞かなくても中継はできる。しかも当時、ショーターは無名でした。しかし聞かなければ「情報」は得られない。

 ショーターの話は衝撃的でした。1970年代のマラソンは現在のようなスピードレースと違い、まだスタミナを競うレースでした。ところがショーターは、どのくらいのペースでいったら最後までスピードを落とさずに走りきれるかという実験を繰り返し、トップスピードの10%ダウンという結論に行き着いた。それが5km=15分25秒前後のペースだというのです。話を聞いた瞬間に、「これはマラソンの革命だ」と思いました。

 実際、レースでもその通りのことをやってみせ、その年から福岡国際を4連覇し、ミュンヘン五輪でも金メダルを獲得しました。私はショーターに事前に取材していたお陰で、どんな練習をどんな意図で積んできたのか、テレビ中継の中で正確に、深く伝えることができました。

 メールやSNSを使ったコミュニケーションは確かに便利ですが、文字数が限られていたり、相手の間や表情といった情報もなかったりします。表面的なコミュニケーションに終わってしまう危険をはらんでいると思います。多少面倒で時間がかかったとしても、フェイス・トゥ・フェイスで相手とコミュニケーションをとったほうが絶対にたくさんの情報が得られるはずです。  

※SAPIO2013年12月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

結婚生活に終わりを告げた羽生結弦(SNSより)
【全文公開】羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんが地元ローカル番組に生出演 “結婚していた3か間”については口を閉ざすも、再出演は快諾
女性セブン
「二時間だけのバカンス」のMV監督は椎名のパートナー
「ヒカルちゃん、ずりぃよ」宇多田ヒカルと椎名林檎がテレビ初共演 同期デビューでプライベートでも深いつきあいの歌姫2人の交友録
女性セブン
NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
《重い病気を持った子を授かった夫婦の軌跡》医師は「助からないので、治療はしない」と絶望的な言葉、それでも夫婦は諦めなかった
女性セブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン