時給が上がらない――これは、パートで働く女性共通の悩みだ。本誌で時給に関するアンケートをとったところ、35%を超える人が、時給は700円台と答えた。各調査機関による平均のパート・アルバイトの時給は首都圏では900円を超えることが多いから、それを大きく下回っていることになる。
なぜ、私たちの時給は低いままなのか。パート問題に詳しいダイバーシティ・ラボの吉田珠江さんは「時給を上げるチャンスを自らつぶしている人が多い」と指摘する。いったい、どういうことだろう。
東海地方にある写真ショップに勤めるA美さん(50才)は、毎朝、中学校へ通う子供を見送ってから、歩いてショップへ出勤する。まだ、9時過ぎの店には誰も来ていない。シャッターを開けるのが、A美さんの最初の仕事だ。勤め始めて15年。今は、フィルムの現像を依頼されることはほとんどない。客の多くは、デジカメのプリントやアルバム作りを目的に店にやってくる。文房具の品揃えは、年々、増えていっている。
この店を日中、もう3人のアルバイトと切り盛りし、6時になると仕事は終了。スーパーに寄って食材を買って帰宅し、7時半には夕食だ。
A美さんは、店番以外にも大きな仕事を任されている。ほかのパートとアルバイトの時給を決めることだ。
――時給は、どんなふうに決めているんですか?
「愛知県の最低ライン、今なら780円からスタートです。居酒屋とかみたいに、1000円から、といいたいですけど、うちじゃ無理ですね」
――時給が上がる人と上がらない人、何が違うんですか?
「客観的な基準はありません。接客態度や売り上げ…。いろんなものを見ながら決めています。アップする時は10円ずつ。様子を見ながら少しずつ、です」
いろいろと教えてくれるA美さん自身の時給はというと、なんと1500円。
「ほかの人にはとても言えません(笑い)。3年ごとに、『そろそろ辞めたいんですが…』と言っていたら、いつの間にかこんなに上がっていて」
――でも、何か秘訣があるのでは? どうしたら時給は上がりますか?
「基本的には、ほかの人が嫌がることも引き受けるということですね。土日も店に出たり、急なシフトの変更にも対応したり。そうやって無理をしてくれているのを見れば、こちらもそれに応えなきゃなと思います」
もちろんそれは、A美さん自身が通ってきた道でもある。「でも、それ以上に大切なのは笑顔。これができない人は、一生、時給は上がりませんよ」
A美さんは働き始めた頃、鏡に向かって笑顔を作る“自主トレ”をしていたという。
急なシフトの変更には応えられなくても、笑顔での接客なら、今日からでもできるはずだ。
※女性セブン2013年12月12日号