「おせち料理は、江戸が発祥。重箱に隙間なく詰める“重詰め”は江戸スタイルで、雑菌が入り込む隙間をなくし、日持ちさせるための知恵だったんです。関西におせち料理が広まったのはだいぶ後。詰め方も江戸とは違って、盛りつける“重盛り”なんです」
こう話すのは料理研究家の服部幸應さん(服部さん・以下「」内同)
歴史あるおせち料理だが、1970年代頃は家庭で手作りするのが当たり前だった。
「年末になると、どの家もおせちの準備をはじめ、おばあちゃんから、お母さん、子供へと家の味が受け継がれていた時代ですね」
1980年代は、女性の社会進出や核家族化が進み、おせちに時間や手間をかけたくないという傾向に。
「それでも、まだまだ“おせちは家で作るもの”という考えの人が多かったんじゃないかなあ。ただし、昔のようにすべて手作りするのではなく、市販品をうまく利用して、家で作るものは最低限になってきました」
1980年代になると、百貨店でおせち料理が買えるようになり、購入する人も少しずつ増えていったという。
「中華や洋風といったバリエーションが出てきたのも1980年代。特に1980年代後半のバブル期にはフォアグラやトリュフ、キャビアなんかの豪華食材を使ったおせちが登場したのも印象的です」
続いては1990年代。
「普段の料理にも手間をかけなくなったから、手作りおせちも激減。買って済ませようという傾向が強くなりましたね。手作りする場合も、電子レンジやオーブン、冷凍食品を活用して、いかに簡単にするかという時代です」
また、人気料理人がプロデュースするおせちも流行。
「1990年代は、テレビで『料理の鉄人』(フジテレビ系)が好評だったから、鉄人シェフや有名料理人たちのおせちが続々と販売されるようになりました」
2000年代に突入すると、こんな傾向が。
「私はここ20年くらい、百貨店や有名店などのおせちを購入して、食べ比べしてるんですが、一般的にも“おせちは買う”のが主流になりました」
2000年代はコンビニでも発売されるようになり、手頃なものから豪華なものまで種類が豊富で、選ぶ楽しみも。
「安くておいしいのもありますよ。家庭の味が失われつつあるのは寂しいですけどね…。ただね、買うのが当たり前の時代になると、手作りが見直されるものなんです。だから、これからは家で作るという人も増えると思いますよ」
※女性セブン2013年12月26日・2014年1月1日号