芸能

中森明菜が撮影時に不機嫌だった理由を撮影した写真家が評価

 バブル期に咲いた徒花のように数多のアイドルが「1980年代」にデビューを飾り、黄金期の上昇気流に乗った。ノンフィクションライター・安田浩一氏がその代表格である中森明菜(48)の「肖像」を綴る。

 * * *
 業界から漏れ伝わる明菜の「評判」は、当時にしてもけっして芳しいものではなかった。

 わがまま、自分勝手、といった明菜の「素行」を問題視するメディアも少なくなかった。私が取材した関係者の中でも、明菜との衝突を経験していない人が、ほとんどいなかったことは事実だ。

 だが、明菜は本当に「わがまま」だったのか。デビュー当時から、明菜のジャケット写真などを撮り続けていた写真家の野村誠一は、「誤解されやすいが、それも、ある種のプロ意識ではなかったのか」と明菜を弁護する。

 野村が初めて明菜を撮影したときのことだった。表情は暗いし、どこかムスっとしている。どうにかだましだましの撮影を終えた野村にとって、明菜は必ずしも好印象を残さなかった。後に、野村は明菜へ訊ねた。なぜ、あのとき、不機嫌な顔を見せていたのか。明菜はこう答えたという。

「どうせアイドルなんて、売れなければ相手にされない。カメラマンに媚びたところで、意味ないじゃないですか。だから、きちんと売れるようになったら、そのときはしっかりと向き合おうと思いました」

 野村は、その生意気とも取れる明菜の言葉に感心したという。

「彼女は彼女なりに仕事の“理由”を見つけているんです。海岸で撮影したときもそうでした。天候が悪く、強い風と湿気で髪型が乱れてしまった明菜は、『きょうはもう、これで撮影を終えましょう』と皆に進言したんです。

 まだ十代なのにたいしたもんです。ものすごく際どい形ではあるけれど、これも立派なプロとしての心意気だと思いました」

 そうなのだ。衝突の原因を探ってみれば、その多くはファッション、髪型、選曲など、どれもが「見せ方」を巡っての争いである。

 明菜は自我を通した。セルフプロデュースにこだわった。周囲との摩擦を恐れず、ひたむきに走り続け、そして力尽きた。それが明菜の80年代である。

(文中敬称略)

※週刊ポスト2014年1月17日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン