「涙にはストレス解消の効果がある」と、メンタルヘルスケアの専門家は指摘する。ここでは45才自営業女性が語った息子にまつわる涙エピソードを紹介しよう。
* * *
10年ほど前の話です。当時7才だった息子は、やんちゃな子でした。遠い町までひとりで自転車を走らせて遊びに行ったり、高い木から落ちて流血して帰ってきたりと無鉄砲。心配だったので、門限を夕方5時に決めました。母子家庭なこともあって、過保護だったのかもしれません。
ところが、「5時では早すぎる」と言って、ちっとも守ってくれませんでした。そこで、「時間どおり帰ってこないと、お母さん心配して倒れて、家の鍵が開けられなくなるからね」と話すと、ようやく、きちんと帰ってくるようになりました。
ところがある日、門限から2時間も遅れて帰ってきたのです。外は暗いし、友達の家に電話してもいません。捜しに行こうとしていた矢先の帰宅だったので、内心ホッとしつつも、罰として家に入れませんでした。
初めはドアを叩いていましたが、1時間ほど経つとおとなしくなったので、反省したかと思い、家に入れました。けれども、「ごめんなさい」がありませんし、ふてくされた様子。「約束を守らない子は、お母さん嫌いだよ」と言うと、息子は唇を噛みしめて俯いています。「どうして遅くなったの?」と詰問すると、息子は黙って、私に向かって手のひらを広げました。
「見つからなくて…」
息子の手の中には、萎れた四葉のクローバーがありました。「お母さんに、プレゼントしたかったから」。
すっかり忘れていましたが、その日は私の誕生日だったのです。驚いて言葉が出ませんでした。ジワジワとうれしさがこみあげてきて、息子を抱きしめていました。その時のクローバーは今も押し花にして、しおりとして使っています。高校生になった息子がしおりを見ると、いつもくすぐったそうな表情になるので、それをこっそり楽しんでいます。
※女性セブン2014年1月30日号