芸能

ビートたけし 視野の狭いオタクが飯のタネにされる構図解説

 4月から消費増税が実施され、5%から8%になる。国民の家計に大きなインパクトを与えるのは必至の情勢だが、増税決定に至る過程では、国民から大きな反発がなかったと思う方もいるのでは。特に、若い世代の政治への無関心も顕著だ。なぜ、こうした状況になっているのか。ビートたけし氏は、著書『ヒンシュクの達人』(小学館新書)の中で、現代の若者たちの意識について、こう分析している。

 * * *
 大人気ドラマの決めゼリフだとか、新型のスマートフォンの機能だとか、どうでもいいことばかりが話題になっているけど、国民の生活にズッシリのしかかる消費税の話は、みんなサラリと受け流すってのは一体どういうことなんだろう。

「2014年4月から消費税を8%に上げる」と、安倍晋三首相がとうとう正式に宣言したわけだけど、別に大きなデモや反対運動が起こるわけでもなくてさ。みんなそれを当たり前のように受け入れちゃってる感じなんだよな。

 特に若いヤツラが大人しいよね。これがオイラの若い頃だったら学生運動のネタになるんだろうし、もしヨーロッパで同じことが起こったら若者たちが「俺たちの生活を潰す気か!」って黙っちゃいないよ。もしかしたら、今の若い人たちは「少しでもいい暮らしをしたい」なんてこれっぽっちも思っちゃいないのかもしれないよね。

 オイラが若い頃は「あの高級車に乗りたい」「いい時計が欲しい」「カッコいいマンションに住みたい」「旨いメシが食いたい」っていろんな方向に欲をもってた。だからこそジャンジャン仕事をやって、一発当ててやろうとか、出世してやろうと思っていたわけだけど、おそらく今の若い人たちの多くはそんな風には考えていないんじゃないか。

 別に今の若いヤツに欲がないってわけじゃない。よく「オタク」だというけど、かえってひとつの対象や趣味にハマることは多い。「AKB 48に人生を賭ける」とか「新型のiPhoneを買うために何日も並ぶ」とか「都内の行列ができるラーメン屋を完全制覇する」みたいなヤツは至るところにいるわけでさ。だけどよく考えてみると、そういうのはたいがい「小銭ですむ道楽」なんだよな。

 意識的なのか無意識なのかはわからないけど、若いヤツの多くが、無理して働いて自分の収入やステータスを上げようとしなくても追っかけられる趣味や道楽を選んでしまっているわけだよ。アイドルだとかスマホだとかラーメンみたいな狭いところに自分のテリトリーを限定して、その中だけで生きていこうとしているんだよな。

 だから給料が少々下がろうが、税金が増えようが、そういうことは見ようとしないし、深く考えない。楽に稼いで、その範囲の中で自分の好きな分野だけを見て生きていこうってヤツが多いんじゃないか。なんで無理して富裕層にならなきゃいけないのか。自分の世界があればお金なんてどうでもいいと思ってるヤツばかりなんだよ。

 だけど、そうやって自分の視野をわざと狭めてる若者がいる一方で、そいつらを「メシのタネ」にしてる賢いヤツラもいるってのが、今の時代の「二極化」の実態でさ。頭がいいヤツは、与えられた状況に満足しているヤツラをターゲットに、そいつらの趣味嗜好に合ったものをうまくあてがって商売にしてさ。視野の狭いオタクが気がつかないうちに、ドンドン搾取して儲けてるって図式なんだよな。

※ビートたけし/著『ヒンシュクの達人』(小学館新書)より

関連キーワード

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン