ライフ

谷川浩司永世名人に「もしA級陥落したら」尋ねた作家の述懐

 新しい年が明けて間もなくのこと、日本将棋連盟に大きな衝撃が走った。1月7日に行なわれたA級順位戦第7回戦で谷川浩司九段(17世永世名人)が渡辺明二冠に敗れ、1勝6敗となった。後日に行なわれた順位戦で競争相手が次々と星を伸ばし、その結果、谷川氏の降級が決定した。19歳から32期連続で保持していたA級ランクからの陥落。一つの時代の転換点を『将棋世界』元編集長で作家の大崎善生氏が綴る。

 * * *
 永世名人のA級陥落というのは独特の緊張感が伴うものである。かつて昭和を代表する大名人、大山康晴15世名人は永世名人としてA級を陥落すれば即時に引退することを表明して、ついにその一生をA級のまま送った。大山には永世名人を横綱とすればB級は平幕との意識があり、横綱が平幕で戦うわけにはいかないという矜持があったのだ。

 さて谷川はどうするのか。将棋ファンは誰もが固唾を飲んで見守ることになった。私もその成り行きにもちろんある緊張感を伴って注目していた。というのは今からもう10年近く前に谷川とある雑誌の企画で対談し、その席でオフレコではあるが、もし万が一A級から陥落したらどうするかと聞いたことがあったからだ。

 当時の谷川はタイトル保持者でありバリバリのA級棋士で降級とはほど遠い存在だったが、なんとなく興味があって聞いてみたのだ。「さあ、困りましたねえ」と、人の良い谷川は私の無理な質問に少し弱った顔をして黙り込んだ。谷川は実直な性格で、尋ねたことには恐ろしいほどに正直に答えてくれる。その谷川が簡単に答えを出せないということは、結構ぎりぎりの問いかけなのだ。

関連キーワード

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン