「特捜部に聴取されたし、五分五分でアウトかも……」──前東京都知事の猪瀬直樹氏が周囲にこう呟いている。
猪瀬氏は医療法人「徳洲会」から5000万円の資金提供を受けていた問題で昨年12月19日、知事を辞任。猪瀬氏は「先方の好意で、個人的に借り受けたカネ」と説明したが、東京地検特捜部は違法性がないか捜査を進め、この1月22日には本人への事情聴取に踏み切った。
その猪瀬捜査が、大詰めを迎え、いよいよ逮捕のXデー秒読みといわれる。捜査関係者がいう。
「選挙直前に多額の金銭を受け取り、当選直後、徳洲会とのパイプ役だった新右翼団体の代表に500万円を渡している。そのカネの原資は徳洲会からの5000万円と見られる。両者は事情聴取で“単なるカネの貸し借り”だと否定したが、どう見ても“選挙の謝礼”だ。公職選挙法違反で立件するなという方が難しい」
ただし、公選法違反だけであれば、知事を辞任していることもあり、逮捕まで踏み切る必要はない。在宅起訴で十分というのが捜査当局の考えのようだ。
だが、検察は「公選法違反ルート」と同時に、別方向の捜査も進行。それが「贈収賄ルート」だ。都議会でも追及されたが、猪瀬氏が売却を強く求めた東電病院(東京・新宿区)をめぐる疑惑である。
「徳洲会グループ創設者である徳田虎雄氏は猪瀬氏に“東電病院を取得したい”という意思を伝えていた。当時、猪瀬氏は東電の大株主である東京都の副知事であり、次期都知事候補。徳洲会側が“期待”をしてカネを渡し、実際に意を汲んで猪瀬氏が動いたとなれば、贈収賄が成立する」(同前)
そう睨んだ特捜部は、昨年末から関係者への聴取を重ね、容疑を裏付ける証言を多数得ているという。
まず、東電社員からは「都の意向には逆らえない。猪瀬氏の動きがあったから病院の競売を決めた」という証言。さらに、都庁幹部は「東電病院の管轄である福祉保健局に副知事の猪瀬氏が報告を求めたり、指示を出したりしていた」と語っているという。
「猪瀬氏はすでに知事職を離れているので、証言しても自分には何らマイナスにならない上に、当時、猪瀬氏に怒鳴り散らされて辟易していた担当者らが、こちらが聞く前にペラペラとしゃべってくれる」(前出・捜査関係者)