国内

農家後継者に年150万円生活費 TPP不満をカネで黙らす意図

 4月1日からいよいよ消費税率が8%に上がる。安倍政権は増収をあてこんで過去最大の約96兆円もの来年度予算案を編成し、さらに消費増税による消費の冷え込み、すなわち「増税デフレ」を防ぐという名目で5.5兆円の景気対策(補正予算)を打ち出した。

 だが、安倍晋三首相は消費増税の実施を決断した後の昨年11月、各省庁の無駄な事業をチェックする“安倍仕分け”を指示した。そして今年1月20日、麻生太郎・副総理兼財務相は行革推進会議で、全省庁の予算概算要求から「34事業4574億円」の無駄な事業を削ったと胸を張った。しかし、補正予算で無駄とされた事業のうち8割が復活していたのだ。

 安倍政権は「攻めの農業」を掲げて農産物輸出額1兆円の目標と農家の「所得倍増」を掲げた。その柱が、高齢化などで作り手がいない休耕田や耕作放棄地を借り上げて新たな担い手に貸し付ける農地バンク制度だ。

 その中でも、安倍仕分けで60億円カットされながら、補正では逆に99億円に増やされた焼け太り予算が「青年就農給付金」である。これは、45歳未満の“青年”が新たに就農する際、研修期間の2年と農家経営開始後5年間の最長7年間、年間150万円の生活費を支援する制度だ。

 新規就農といっても、年間約5000人の給付対象者の半数は親から農地を受け継ぎ、家も農機具もある農家の後継者なのだ。なぜ、増税のカネでそこまでの生活支援が必要なのか。

「TPP(環太平洋連携協定)で打撃を受ける農家の不満を、“後継者に年間150万円払うから”と札束で黙らせようという裏の意図がある」(農協関係者)

 農水省は、「通常予算なら新規対象者に月額約12万円が支給されるのは夏以降になるが、補正で組めば消費増税前後の3、4、5月に前倒しで支給できるため景気対策になります」(経営局就農・女性課)と説明する。景気対策のバラマキと認めているのである。

 ちなみに仕分け人は3か月前、この給付金の効果を「5000人以上に配って(農業に残るのは)数百人」と厳しく評価している。農水省にこの事実を質すと、「その数値がどこから来ているのかわからない。一般的な試算では新規就農者のうち離農者は3割程度です」と、“仕分け人がアホ”と開き直った。“安倍仕分けなど茶番劇だ”と自ら認めているのである。

※週刊ポスト2014年3月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン