国際情報

中国政府 昆明テロ犠牲者の葬儀・治療費全額負担の意図とは

 中国国営新華社電によると、中国政府は3月1日に雲南省昆明市で死者29人、負傷者143人以上を出したテロ事件で、犠牲者の葬儀費用や葬儀に参列する親族らの滞在費や食費など経費のほか、負傷者の治療費などを全額国費で負担すると発表した。

 通常の刑事事件では異例の措置だが、政府が手厚い対応をみせることで、テロの犯人とされるウイグル族や新疆ウイグル自治区での独立運動について、国民に強い反感を植え付けさせる狙いがあるようだ。

 昆明市の李喜・副市長は死傷者172人や親族ら一切の支払いを国費で賄うことについて「人道主義に基づくもので、昆明市でも被害者へのお見舞い金を支出することを決めた」と前置きして、市内部で被害者救済の特別対策本部を立ち上げて、市の担当者が被害者や親族と一対一で対応するなど、「可能な限りできるだけのことをしたい」との方針を明らかにした。

 これに対して、被害者の親族からは「政府の対応は極めて周到で真心がこもったものだ。食事やホテルなどの問題はすべて解決した。心の底からありがたいと思っている」と話している。

 その一方で、雲南省トップの秦光栄・党委書記は「犯人は8人」で、事件当日に逮捕された16歳の女の供述として、「彼らは雲南省に住んでいたが、海外在住のイスラム原理主義のテロリストグループと合流するために、国外への出国を計画していたものの、うまくいかず、結局、昆明で『ジハード(『聖戦』)』を起こすことを決め、凶行に及んだ」と説明した。

 これについて、中国情勢に詳しいジャーナリスト、相馬勝氏は次のように解説する。

「秦氏の発言は犯人グループが海外のイスラム過激派と気脈を通じていることを強く示唆する狙いがあり、新疆ウイグル自治区での独立運動も海外のテロリストグループが密接に関係していることをほのめかしている。

 いわば、今回の事件はニューヨークの9.11事件やボストンマラソンのテロと同じく、海外のテログループが強く関与しており、今後の中国内での独立運動の取り締まりは国際的な対テロ対策の一環と強調したい狙いが見え隠れしている」

関連キーワード

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン