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ベビーシッター男児遺棄事件 親が情報見極める目養う必要性

 埼玉県富士見市で起きたベビーシッターによる2才児遺棄事件が波紋を呼んでいる。ネットでなんでも頼める時代に起こった今回の事件。「なんでベビーシッターをネットなんかで頼むの」と疑問を投げかける人も多い。しかし、急な仕事が入ったり、子供が発熱してお迎えが必要になったが行ける親族がいないなど、待ったなしの状態で、やむを得ず頼んだという母親も少なくない。

『母親はなぜ生きづらいか』(講談社現代新書)の著書がある精神科医の香山リカさんは次のように話す。

「そもそも、子供をベビーシッターさんに預かってもらうこと自体に問題はない。今回の事件は、行政によるシッターの資格認定など保育制度の整備が進まないなかで、ネットという落とし穴にはまってしまったのだと思います」

 地縁・血縁の強かった時代とは違い、気軽に子供を預かってもらう人間関係がない現代で、育児もアウトソーシングに頼らざるをえないのは確かだ。しかし、いまだ“育児は母親がすべき”という風潮が強いなかで今回のような事件が起こると、ますます周囲に頼りづらくなり、生きづらくなるのではないかと香山さんは危惧している。

「ただやはり、ネットで掃除代行や宅配の食事を頼むことと、子供を預かってもらうことは同列ではないはず。そこには、命がかかわってくるからです。ネットは顔が見えないわけですから、性善説のビジネスです。その怖さは忘れてはいけません。ネットに慣れている若い世代には、わからない感覚なのかもしれませんが…」(香山さん)

 今回の事件を受けて、ネットニュース編集者・中川淳一郎さんは、“コスパ信仰”を指摘する。

「レストラン評価サイト『食べログ』では“コスパ(コストパフォーマンス)がいい”という言葉がよく使われますが、最近のネットの傾向として、コスパの良さが過度に重視されている気がします」

 安いものを見つけて買うことは、「消費者として賢い」という雰囲気は確かにある。

「でも、やっぱり今回の事件は“安かろう、悪かろう”だった。情報をやみくもに信用するのではなく、匿名情報だからこそ、情報を見極める目を養うことが必要です」(中川さん)

 まずは、情報を発信している人を、検索エンジン(GoogleやYahoo!など)で徹底的に検索する。悪評はないか、その評価は同じ人が悪意で書き込んだのではないかなどさまざまな角度からチェックすべきと中川さん。

 公益社団法人全国保育サービス協会事務局次長の長崎真由美さんも言う。

「個人的な見解ですが、情報が氾濫するなかで、正しい情報の選択がしづらくなっているのではないかと思います。保護者の側の、選択する力も問われていると思います」

 ネットの情報は玉石混淆。その前提のもと、上手にネットを利用する目を持たなければならない。

※女性セブン2014年4月10日号

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