愛犬が難病になってしまったら、どうすればよいのか。獣医療の世界が劇的に進化するなか、3月19日に発売された『犬の名医さん100人データブック』(小学館)編集部の協力のもと、犬の心臓外科の名医と最新治療を紹介しよう。
住環境などの影響で、欧米と比べると日本で飼われている犬の割合は、圧倒的に小型犬が多い。当然ながら、小さくなるほど外科手術の難易度は上がる。
先天性心疾患の動脈管開存症、肺動脈狭窄症の矯正手術を日本で初めて成功させ、後天性疾患である僧帽弁閉鎖不全症の小型犬への形成術を世界で初めて成功させたのが、茶屋ヶ坂動物病院の金本勇院長である。
「僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の弁を支えている腱索というヒモ状のものがだんだん伸びてきて、ある日ぷつんと切れて、突然、呼吸困難を起こしたりします。高齢の小型犬に多く、特に10歳くらいからものすごく多くなってきますね。いま、ワンちゃんの心臓病で一番多いのがこの病気です」(金本氏。以下「」内同)
2002年に消費者金融『アイフル』のCMに出演したチワワ“くぅ~ちゃん”の大流行を覚えている人は多いだろう。
「実はそのとき飼われた子たちが10歳ぐらいになるものですから、今チワワにこの病気が非常に多いんです。キャバリア、シーズーといった犬種にも多い。親がこの病気で亡くなっていると遺伝する可能性が高くなります」
発症前の兆候としては、咳が出ることがあげられる。
「咳っていうと呼吸器のほうの病気を疑いますけど、心臓から来る咳もあるんです。風邪や肺炎と間違えられることもよくありますね」
内科的治療で改善がみられない場合は、心臓の病気を疑うことも必要というわけだ。手術には人間の子供用の人工心肺が使われ、1~2週間の入院が必要となる。
「費用は100万円としていますが、人工心肺の実費で30万円。麻酔代と手術代と術後管理を含めますから、足が出るんです。大変ですよ(笑い)」
採算度外視で診療にあたる名医のもとには、遠方から愛犬を連れてくる飼い主も多い。
※週刊ポスト2014年4月18日号