飼い犬に教えるしつけの代表例が「オスワリ」と「フセ」。主宰するCan! Do! Pet Dog Schoolで科学的な理論に基づく犬のしつけを指導する西川文二氏が、本当に犬はオスワリとフセを理解しているのかについて解説する。
* * *
オスワリといえば、お尻を床に降ろす。フセといえば、フセの姿勢になる。だからうちの犬は、オスワリもフセもちゃんとわかってる。―本当にそうでしょうかね。テストをしてみましょ。
オスワリを、フセの姿勢から指示してみてくださいな。結果は如何に。できなければ、わかっちゃない、ってこと。
ひとつめのテストをクリアできたなら、次なるテストへ。犬から4~5メーター離れる。で、犬が立ち姿勢ならオスワリを、オスワリをしているのならフセを指示する。さて、できるか否か。
できない、って方がほとんどではあるまいか。
コレ、算数で例えると、納得がいくはず。足し算がわかってるってのは、3桁だろうと4桁だろうと、計算できるってこと。でも最初からはできない。まずは、繰り上がりのない、それも小さい数同士の足し算から理解させる。
それができたら、繰り上がりのある1桁同士の足し算を、それができたら……ってな具合に少しずつ難易度を高めてくと、どこかでどんなに桁数が増えようと、足し算ができるようになる。そして、そこまで理解できたことで、足し算がわかったってことになる。
オスワリのテストをクリアできなかったのは、算数でいえば1桁の足し算が理解できてるにすぎない。オスワリをちゃんとわかってるわけじゃあない、ってこと。
わかってないのに、わかってるはず、ってな勘違い、これが実にまずい。できないことを無理強いしちゃうんですな。よく、街中でオスワリやフセを飼い主が犬にさせようとして、オスワリ、フセ、を連呼してる姿がまさに、ソレ。
1桁の足し算しかできない子供に、3桁の足し算をさせようとしてる、いわばソレとおんなじ。
どうです、かわいそうなことだと思いません、そういうのって。
※週刊ポスト2014年5月23日号