広汎性(こうはんせい)発達障害は、3歳児健診で発見されることが多く、日本では約100万人と推計されている。検査は問診が主に実施されているが、客観的とはいえず診断に限界があるため、医療機器による診断が求められていた。
成人の場合は、PET(陽電子放射断層撮影)で脳内の伝達物質の働きを見たり、MRI(核磁気共鳴画像)で脳の形態や血流変化を見ることで検査できる。
しかし幼児に対しては、PETは少量とはいえ放射線被曝の危険性があり、MRIは狭い装置内で、じっとさせることが不可能なため、現実的には使用が難しい。そこで開発されたのが幼児用の脳磁計(のうじけい、MEG)だ。
金沢大学医学部附属病院精神科診療科長の三邉義雄(みなべよしお)センター長に話を聞いた。
「MEGは超伝導センサー技術を使い、大脳の神経活動を磁場の変化として頭皮の上から直接測定できる装置です。いわば性能のよい脳波計のようなものですが、脳波計は頭に電極を付けるため子供には向きません。幼児用MEGは、ハーフフェイスのヘルメットのような形のところに頭を入れるだけで、頭全体を5分で測定ができます」
MEGで発達障害と診断されても、成長期の子供の薬物治療は慎重にする必要がある。障害ではなく子供の個性と考え、社会適応改善に向けた適切な対応を考えることが大切だ。同センターでは、発達障害研究のための「バンビプラン」を実施、すでに260家族以上の協力を得ている。今年も6月から、さらに多くの協力者を募集する。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2014年5月30日号