紙おむつは、1940年代にスウェーデンで作られ始めたといわれる。第二次世界大戦中、スウェーデンは布の原料である綿花が不足し、布おむつの生産が困難になった。苦肉の策として考え出されたのが紙製のおむつだった。黎明期の紙おむつは吸水性のある紙を何枚か重ね、メリヤスで包んだ簡単なものだった。
日本で初めて紙おむつが発売されたのは1950年代である。しかし当時の製品は全体をおむつカバーで包む必要があり、決して使い勝手の良い物ではなく、普及することはなかった。紙おむつはあくまで布おむつの代用品でしかなかった。
一方、大人用の紙おむつも1960年代に発売されたが、一部の医療機関で使われただけで一般に広まることはなかった。
その流れを変えたのが、高分子吸収材の登場である。1970年代に、自重の数十倍の量の尿を吸い取ることができる高分子吸収材が発明され、紙おむつの性能は格段にアップした。
綿状のパルプと高分子吸収材を混ぜあわせた吸収体を不織布や防水材などで挟んだ多重構造──現在の紙おむつの原型がこの頃から作られ始め、欧米で普及していく。1980年代になると、日本でも高分子吸収材が使われた紙おむつが発売され、普及が加速した。
ちなみに世界で初めて紙おむつに使われた高分子吸収材は日本製(株式会社日本触媒)だった。現在もこの分野については世界をリードし、各国製品との品質の違いを生んでいる。
とくにアジア諸国での日本製紙おむつのニーズは高い。たとえばユニ・チャームの子供用おむつはタイ、ミャンマー、インドネシアなどでは軒並みシェア50%以上を記録している。2013年の夏には日本国内でも、アジアからの旅行者や転売目的のバイヤーによる買い占めが横行し、一時ドラッグストアやスーパーで子供用紙おむつの品薄状態が続くという現象さえ起こった。
また、ユニ・チャームはアジアの新興国で、現地のニーズに合わせていち早く商品展開。2013年度決算では、全体の売上高に占める海外比率は50%を超えた。日本の紙おむつが世界のスタンダードになる日は案外近いのかもしれない。
※週刊ポスト2014年6月6日号