ビジネス

森永卓郎氏が夏以降も景気は悪化し続けると分析 その根拠は

 4月の消費増税は日本の景気にどんな影響をおよぼすのか。夏以降、景気は回復するとの見方がある一方で、経済アナリストの森永卓郎氏は、「夏以降も景気は悪化し続ける」と語っている。その根拠はなにか。森永氏が解説する。

 * * *
 4月の消費税率引き上げで落ち込んだ日本の景気は、今後どうなるか。政府、日銀、御用学者らは、増税による落ち込みは駆け込み需要の反動に過ぎないと口を揃え、「夏から景気は急激に回復軌道に乗る」と声高に叫んでいます。

 実際、政府は無理矢理にでもそれを実現させようと画策しています。たとえば、各部署に指示を飛ばして、予算の前倒し執行を行なおうとしている。公共事業などの効果の大きい予算については、9月までの今年度前半にその6割を執行し、昨年度の補正予算に関しては、年度前半に9割を執行するよう、お達しを出しているのです。

 また、政府は児童手当受給者には子供1人当たり1万円の「子育て世帯臨時特例給付金」の給付を決めましたが、その実際の支給は7~9月に行なわれる見通しです。つまり、政府は金をばらまいてでも、何が何でも7~9月期に景気を上げようとしているのです。

 そうした政策による要因もあって、シンクタンクやエコノミストたちの大多数も、7~9月期から景気は戻ると見ているようです。しかし、私はそうはならない、年内いっぱい落ち続けると見ています。

 なぜかというと、まず、物価上昇の本番はこれからやってくるからです。たとえば、一般家庭に一番影響の大きい電気料金は、4月からではなく5月から値上げされました。

 上げ幅が最大の東京電力では、消費税アップ分と輸入価格が上がった燃料費調整分、再生可能エネルギー負担金を合わせて、「平均的な家庭」の料金が4月より約5%、430円上がり8541円となります。燃料調整分は6月も上がるので、6月の電気料金はさらに上がります。その影響は各方面に及び、たとえば東京都の半分ぐらいの自治体では給食費が値上がりします。

 こうした公共料金をはじめとする物価上昇は、今後もズルズルと続いていきます。その一方で、今年の春闘でもサラリーマンの賃金はほとんど上がらなかった。平均0.5%程度でした。

 まだ気づいている人は少ないようですが、年金も4月から受給額が0.7%カットされています。というのも、年金は2か月分をまとめて偶数月の15日に支給されるルールなので、今年の4~5月分が支払われる6月まで、多くの年金生活者はカットされたことに気づかない。彼らが年金カットに気づいたとき、財布の紐を締めようと考えるのは明らかです。

 物価が上がって、給料は横ばい、年金は減額で、消費行動が活性化するとは考えられません。私は、夏以降も景気は悪化し続けるとしか思えないのです。

※マネーポスト2014年夏号

関連キーワード

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン