ビジネス

サッポロ『極ゼロ』 「自主的な販売終了決めた」と幹部社員

 スーパーやコンビニで130~140円前後、セールとなれば100円台で売られることもある「第3のビール」は庶民の味方だ。それが今、財務省・国税庁からターゲットにされている。6月上旬に明らかになったサッポロビールのヒット商品『極ZERO(ゼロ)』販売停止騒動の背景には「大増税計画」があった。ジャーナリストの永井隆氏がレポートする。

 * * *
 きっかけは、1本の連絡だった。東京・恵比寿にあるサッポロビール本社に1月、国税庁から「製法に関する情報提供要請」が入ったのだ。

 当局が求めたのは、昨年6月にサッポロが発売した第3のビール『極ゼロ』に関する情報。製法によっては税率が安い第3のビールに該当せず、通常のビールと同じ税金がかかる―─だからレシピを明らかにせよという連絡だった。

 それから約5か月。尾賀真城(まさき)社長は急遽会見を開き、苦渋の表情で「5月の製造分を最後に販売終了する」ことを発表した。突然の販売停止は異例のことだ。

 発売からこの5月までの1年弱で600万ケース以上(1ケースは大瓶20本換算)、実に2億本を販売したヒット商品。同社主力の『黒ラベル』『ヱビス』、第3のビール『麦とホップ』に続く柱に育ちつつある矢先での出来事だった。

 今後は一部の製造方法を見直して、7月15日から第3のビールよりも酒税率が高い発泡酒として同じブランドで再発売する。その“増税”の影響により、140円前後で販売されていた『極ゼロ』は20円ほど値上げされる見通しだ。

 国税庁の「情報提供要請」を受けてから、社内は緊迫。限られたメンバーで製法に関する「自主検証」が進められた。

 尾賀社長を横浜市の自宅で直撃すると「今は会見以上のことはお話しできません。終売と(リニューアルしての)再発売はベストな判断だと思っています。消費者にはご迷惑をおかけして申し訳ありません」と言葉少なに語るのみだったが、同社幹部社員はこう明かす。

「仮に、国税庁から先に“第3のビールではない”と認定されてしまえば、即日終売で小売店や流通などを大混乱に陥れてしまう恐れがありました。だから社内検証を進める一方で、役員らが繰り返し集まり、自主的な販売終了を決めました」

 ただし、多くの社員にとっては「販売終了は寝耳に水だった」(若手社員)。5月末時点で残っていた製造途中の液体は捨てることになったという。

※週刊ポスト2014年6月27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン