観光立国をめざし、日本はいま訪日外国人客数を増やすことに熱心だ。今年も過去最高の訪日数を記録し続けているが、日本は外国人客の満足度を高める施策が足りないと大前研一氏は指摘する。具体的に何を整備すべきか、大前氏が解説する。
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日本政府は、2013年の訪日外国人客数が初めて年間1000万人を突破したと大喜びして、東京五輪が開催される2020年に2倍の年間2000万人、2030年には年間3000万人超に増やすという目標を掲げている。
だが、現実問題としては日本は出入国管理が厳しくて来にくいし、来た時の規制や不便も多い。宿泊費が相対的に高く、1泊2食付きなどのシステムの縛りがあって長期滞在には向いていない。欧米では長期滞在の場合は個人の住宅やアパートを借りることが一般的だが、日本では旅館業法で禁止されている。空き家が全国的に10%を超えている日本では、この規制の撤廃こそが「成長戦略」になる。
さらに、そもそも日本についての情報が世界の言語で十分ではない。たとえば中国人は、検索サービス「バイドゥ(百度)」の情報を頼りに日本を旅する人が非常に多い。だから中国人旅行者は、バイドゥで話題になった観光スポットや宿泊施設、飲食店、土産物店などに集中している。
しかし、現状では彼らの満足度は、あまり高くないと思う。なぜなら日本には台湾や香港も含めた中国系の人たちが好む宿泊施設や料理が、まだ少ないからだ。これは他のアジア諸国についても同じことが言える。留学生などに協力してもらい、彼らの目で見た役立つ情報発信を強化していくべきだろう。
日本政府は「YOKOSO! JAPAN」と叫ぶだけでなく、いかに「入国と滞在の敷居」を低くするか、外国人旅行者が廉価かつ快適に長期滞在できるようにするか、ということを真剣に考えなければならない。そのためのソフト(制度と情報)とハード(施設)をしっかり整備することが、最も重要なのである。
※週刊ポスト2014年7月25日・8月1日号