女性器の3DデータをダウンロードできるURLを支援者にメールで送付したことが罪に当たるとされ「わいせつ電磁的記録頒布」で逮捕された漫画家で芸術家のろくでなし子氏(42)。
ことの発端は、彼女が昨年6月に女性器をかたどったカヤック、その名も「マンボート」の制作資金をネットで募ったことにある。ネットを介して不特定多数の人から資金協力を求めるクラウド・ファンディングの仕組みを使い、100万円の調達に成功した彼女は、一定額以上の出資者には「お礼」として女性器の3Dデータをプレゼンとすると約束していた。
ろくでなし子氏が起訴されるか不起訴になるかは不透明だが、いずれにしても弁護団は戦う姿勢を鮮明にしている。
「そもそも、わいせつの3要件を満たしていません」
と語るのは弁護団の山口貴士弁護士だ。3要件とは、伊藤整が翻訳した『チャタレイ夫人の恋人』を巡るわいせつ裁判の最高裁判決(1957年)で示された「【1】いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、【2】普通人の正常な性的羞恥心を害し、【3】善良な性的道義観念に反するもの」をいうが、山口弁護士は「今回はこの3要件を充足しておらず、犯罪は成立しない」と断言する。
性犯罪やインターネット犯罪に詳しい奥村徹弁護士も、「ろくでなし子氏が送付した3Dデータはわいせつ電磁的記録に当たらない可能性があります」とする。
「わいせつな画像データが入ったハードディスクがわいせつ物と見なされたことがありますが、それが『容易に再生閲覧』できる状況だったからです。その点、3Dプリンターはまだ広く普及しておらず、『容易に再生閲覧』できるとはいえない」
仮に3Dプリンターを持っていて再現したとしても、「再現できるのは、実際の女性器とはほど遠い無機質なものです。それをわいせつといえるでしょうか」(同前)
※週刊ポスト2014年8月8日号