最近「胎内記憶」という言葉が密かな話題となっている。これは、母親の胎内にいた時や出産時の記憶を意味する。たとえば、「ひざを抱えて座ってた」や「空からママを探していた。そこには、羽の生えた赤ちゃんが6人くらいいて、私は紺に白い水玉の服を着たママに決めた」などの証言がある。
長野県諏訪市・塩尻市での調査によると、自分から胎内記憶を語り始めた子供はわずか1%ほど。子供はたとえ記憶があっても、それが特別なこととは知らない。おまけに誰からも聞かれないので、語らないまま成長し、忘れていくという。しかも、胎内記憶の聞きだし方が難しいともいう。胎内記憶研究の第一人者で産婦人科医の池川明さんは語る。
「胎内記憶が必ずしも幸せだとは限りません。ある母親が3才の娘に生まれる前のことを聞くと、泣き叫んで拒否したそうです。この子は難産で、ようやく生まれた時には頭がゆがんでいました。つらい経験だったため、覚えていても、話したくなかったのかもしれません」
このように、思い出すのがつらいケースもあるので、聞きだし方には、細心の注意を払う必要がある。タイミングは、言葉を覚え始めた2~4才の頃。ポイントは、身構えて聞きだそうとしないこと。
「記憶を持っているのが当たり前のことのように、別の話の流れで自然に聞きましょう。そして話さなくてもガッカリしないでください。ましてや、せっかく話してくれたことを否定しないで。母親に否定されてトラウマになったという人も少なくありません。一度話してしまうと、満足して忘れてしまうことも多いので、何度も聞き直さないことも大切です」(池川さん・以下「」内同)
聞きだす時の環境もとても重要なポイントだ。
「温かい湯は羊水を連想させるので、入浴中に話し出す子供が多いんです。同様に、胎内を連想させる布団の中もよいようです」
最後に、胎内記憶を聞き出すまでの、会話の内容は?
「愛情を言葉と態度でたくさん伝えて、安心させてあげてください。愛とは、ただ親が持っていても、子供に伝わらないもの。愛が伝わりやすい3つの言葉をお教えしましょう。それは、『そばにいるよ』『信じているよ』『応援しているよ』。これに笑顔を加えたら、完璧。胎内記憶をよいお産、よい子育てに役立ててください」
胎内記憶を否定するよりも、そこから生み出されるプラスの財産がいかに多いかを考えれば、子供の言葉に耳を傾けずにいられない。
※女性セブン2014年9月4日号