日中外交は、尖閣騒動後の絶縁状態から新たな段階に進みつつある。しかし、そんな折、中国企業の期限切れ食肉問題が再燃し、チャイナリスクがまたしても顕在化した。中国に歩み寄るべきか、それとも、別のパートナーを見つけるべきか。重大課題に大前研一氏が答える。
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これから日本は「ボリューム国家(経済大国)」のメンタリティを捨て、財布と胃袋の大きい中国をしたたかに利用して発展するエクセレントな「クオリティ国家」を目指すべきだと思う。
日本はまだボリューム国家として中国と規模で競争しようとしているが、それはもはや不可能だ。相手は人口が日本の10倍以上の13億6000万人もいて、GDPもすでに日本の2倍の1000兆円を超えているという現実を直視しなければならない。
そもそも中国4000年の歴史を見れば、前半の2000年ほどは日本は存在すらしていなかったわけだし、それ以降もこの100年ほどを除けば、常に日本は中国の「10%国家」だったと言っても過言ではないだろう。
ならば日本は「中国の10分の1でかまわない」と達観し、ボリュームで競わないことが重要だと思う。逆に言えば、中国に負けるのは悔しい、あんな奴らにナメられてたまるか、というようなメンタリティを持つほうが歴史的にはおかしいのである。
世界を見渡すと、隣に大国がある小国のクオリティ国家(10%国家)は、たいがい成功している。国民1人ひとりや企業の力は、大国より小国のほうが強い場合が多いからだ。
たとえば、ドイツの隣にあるスイス、デンマーク、スウェーデンなどは、まさにエクセレントな(ほぼ)10%国家である。これらの国の企業は、まずはドイツ人が買ってくれる商品を作り、使ってくれるサービスを提供することを考える。自国より圧倒的に市場が大きい隣国ドイツで成功することが、他のEU諸国に、さらには世界に打って出るための第一歩だからである。
したがって、これらの国の政府がドイツを批判することはほとんどない。ドイツは最も大切な「お客さん」であり、使ってナンボだと割り切っているのだ。
カナダとアメリカ、ニュージーランドとオーストラリアの関係も同様である。そこに小国の劣等感は全くないし、大国のほうも小国を尊敬している。