引きこもりや自傷行為を行う子供たちの心の叫びを、電話やメールで拾い上げ、救ってきた“夜回り先生”こと、水谷青少年問題研究所所長で花園大学客員教授などを務める水谷修さん。その活動のきっかけとなったのは、ある少女との出会いだという。
「12年ほど前、17才の女子生徒から『死にたい』と相談を受けたんです。彼女は私が初めて出会ったリストカッターでした。この出会いに衝撃を受けてその後調べてみると、引きこもって絶望し、自傷行為を繰り返す子供たちが、かなりの数いることがわかったんです」(水谷さん、以下「」内同)
以来、「水谷青少年問題研究所」を設け、連絡先を公開。悩む子供たちからの連絡を待った。
「繁華街で遊び、“眠らない子供たち”には、夜回りで会える。でも、家にこもり“眠れない”で苦しむ子供たちには、本人からのSOSがなければ会えないため、見過ごされてしまう。これは問題だと感じました」
10年前といえば、子供のうつ病が増えてきた頃だ。
「相談件数はこの10年で、メール82万通、電話の件数を加えると、数えきれません。実際に会ったのは25万2300人。心の病を抱える子供は確かに多い。でも、私に言わせれば、このなかにうつ病はいなかった。最近は、心の病に病名をつけて、薬で安易に解決しようとする大人がいるが、副作用、依存…数え切れないほどの問題がある。その前に親がやれることがたくさんあるんです」
では、具体的にどうしたらいいのだろうか。
「人を作る大切な要素のひとつに“環境”がある。そして、それを整えられるのは親しかいません。ストレス過多の現代は親にも余裕がなく、子供に指示だけを出して思い通りに動かし、じっくりと向き合っていないケースが多い。脳に大切な睡眠をとらせず、ゲームやテレビに没頭させたり、メールばかりで、直接人とコミュニケーションをとらせなければ、人間関係がうまく作れず、孤立するのは当たり前。親はそんな環境を与えてはいけない」
あれをしろ、これをするなとただ指示を出すだけではなく、子供の自主的な行動を見守れるような環境にするのがポイントだという。
「子供とは、週1度でもいいから、昼間一緒に体を動かし、夜は21時までに消灯。側に寝て、抱きしめてあげてください。これだけでも、子供は確実に変わります。心の病を癒す・防ぐには、子供を変えるのではなく、親の考え方を変える必要があるんです」
※女性セブン2014年10月2日号