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人間同士の関係が素晴らしくなる見本のような日韓合作映画

 芸術の秋に、感動する映画とめぐりあいたい。ベストセラー『がんばらない』著者で映画好きでもある諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏が、最近みた映画のなかからおすすめの1本、日韓合作の『ザ・テノール 真実の物語』を紹介する。

 * * *
 若い頃から映画好きで、たくさん見てきた。ハリウッドの大作より、小品でもキラっと光る美しい作品が好きだ。今年の秋はそんな映画の傑作が多い。

 最近見たなかで感動的だったもののひとつは『ザ・テノール 真実の物語』。100年に一人出るか出ないかの声を持つ、韓国の天才歌手のベー・チェチョルの物語だ。イギリスの「タイムズ」でも絶賛されたオペラ歌手だが、甲状腺がんに冒される。その手術の際、声帯や横隔膜を司る神経が切られてしまい、絶望の淵に追いやられる。

 そんなときに、かつてチェチョルと交流のあった日本人の音楽プロデューサーが何とかしようと立ち上がる。彼はかつて自らがチェチョルに助けられたことを忘れていなかった。「僕らは友人」と言って、窮地を救ってくれたチェチョルに対し、声を取り戻すための治療を行なっている日本の大学病院の外科医を紹介する。

 日韓合作の映画。お互いがお互いに感謝して、相手のことを考えると、人間と人間の関係は、こんなに素晴らしくなるという見本のような映画だ。

 韓国人俳優のユ・ジテと日本人俳優の伊勢谷友介。同じ年の彼らは、現在の冷え込む日韓関係が念頭にあったという。伊勢谷が出演の理由を明かす。

「難しい時代ではあるが、何かしなければいけない。個人個人が愛情を持って接すれば、未来への希望に向けてトライできると思いました」

 いま日本と韓国の関係はぎすぎすしているが、こんなときだからこそ多くの人に観てほしい。

※週刊ポスト2014年10月31日号

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