ガソリンスタンドではツーンと鼻をつくような独特な臭いがする。この臭いの正体は揮発したガソリンが漏れ出たもの。これは「ガソリンベーパー」(ガソリン蒸気)と呼ばれ日本では規制が義務化されていない。しかしアメリカでは車に回収装置が付けられ、ヨーロッパではガソリンスタンドにある計量器(車の給油口にガソリンを入れる機械)でガソリンベーパーを回収して対策している。
アメリカ式とヨーロッパ式では、どちらの効果が高いのか。独立行政法人「交通安全環境研究所」環境研究領域の山田裕之・主席研究員(工学博士)が解説する。
「スタンド側の対策の場合、吸収したガソリンベーパーをガソリンスタンドの地下タンクに戻す際に漏れ出す可能性があります。そのため、欧米の調査では70~80%の回収率となっています。一方、アメリカで採用されているORVR(※On-board Refueling Vapor Recovery 車搭載型燃料供給時蒸気回収装置)によるガソリンベーパーの回収率は90%台後半とされています。アメリカでは、すでに大半の車がORVR搭載になっているため、米環境保護庁(EPA)はスタンド側の対策は不要と判断しています」
日本では、スタンド側にも、自動車側にも、対策は施されていない。そのため給油量の0.1~0.2%のガソリンベーパーが発生するとされる。スタンドでの1回あたりの平均給油量は約30リットル(総務省家計調査より)なので、その度に30~60ミリリットル分が大気に放出されていることになる。