ガソリンスタンドではおなじみのツーンと鼻をつくような独特な臭い。これは、揮発したガソリンが漏れ出ることによって発生する「ガソリンベーパー」(ガソリン蒸気)が原因だ。欧米ではこれへの対策は採られているが、日本ではまだまだ。この問題を重く見る現職神奈川県知事・黒岩祐治氏が、給油時だけでなく走行時、停車時も大気中に放出されているガソリンベーパーへの対策方法について提案する。
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ガソリンベーパー(ガソリン蒸気)については、かつて国も検討しており、平成14年の中央環境審議会で給油時の燃料蒸発ガス対策について早急に結論を出すことが適当と答申があった。
しかし、現実には未だ結論が出ていない。現在も我が国では法律による規制はなく、神奈川県をはじめとするいくつかの自治体が条例等でタンクローリーからガソリンスタンドへの荷卸時のみ規制しているのが現状である。
一方、国際的な潮流はどうかというと、アメリカやヨーロッパでは、既にガソリンベーパーを規制しており、日本より対策が進んでいる。ただし、アメリカとヨーロッパでは規制の仕方に大きな違いがある。
アメリカで実施されているのは車側での対策となる「ORVR」(※On-board Refueling Vapor Recovery 車搭載型燃料供給時蒸気回収装置)というもの。これをアメリカ式と呼ぶことにするが、ORVRは車からガソリンベーパーが漏れないようにする回収装置を車側に付ける方法で、給油時だけでなく、駐車時、走行時などあらゆる場面でガソリンベーパーを車の中で回収する。
また、回収したガソリンベーパーは運転中に燃料として再利用でき、燃費の改善にも効果がある。一方、ヨーロッパではガソリンスタンド側を規制している。これをヨーロッパ式と呼ぶことにする。
ヨーロッパ式は、ガソリンスタンドにある計量器(車の給油口にガソリンを入れる機械)でガソリンベーパーを回収する仕組みだ。したがって給油時のみガソリンベーパーを回収することになる。
要するに、アメリカ式とヨーロッパ式の違いは車側で対応するか、ガソリンスタンド側で対応するかということになる。この2つの方式を比較すると、アメリカ式は車の構造基準(道路運送車両法による保安基準)や車検制度といった法規制が必要となり、国レベルの対応となる。
一方、ヨーロッパ式は地域から進めることも可能だ。しかし、スタンドの計量器をすべて取り換えるには膨大な投資が必要となり、経営危機が叫ばれているスタンドには大きな負担となる。かなりの財政支援が必要となるだろう。
※週刊ポスト2014年11月7日号