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ライター稼業と原稿料 100万部編集者から渡された封筒には

 作家柳美里氏の告発に端を発した、出版社の原稿料不払い問題が大きな話題となった。4日に出版社が一括で支払うことで解決したが、仕事を発注・受注する立場の全ての人間にとって、カネの問題は他人事ではない。フリーライター神田憲行氏が体験を元に語る。

 * * *
 フリーライターを約25年やっています。筆1本で国民年金と国民健康保険を払い続けて四半世紀、おかげさまで原稿料を払って貰えなかったことはありません。というと同業者が必ず驚くのですから、この業界、そういうトラブルは数え切れないぐらい起きているのでしょう。

 かくいう私も全く無風でここまで来られたわけではありません。支払いをしてくれない会社宛にしつこく電話をしたことがありますし、原稿料の支払い日を何度も約束したのに履行せず、挙げ句の果てには異動した大手出版社の編集者のときは上司に直談判したこともあります。個人相手では銀行までついて行くという借金取りみたいなこともしたこともあります。

 内容証明郵便を出す手前までいったのが、とある英会話学校の子会社の雑誌編集部でした。突然電話が掛かってきて、コラムを6本書いてくれ、という発注でした。ですが、どういう内容のものを書けばいいのか編集者の説明がさっぱり要領を得ない。電話の途中で説明役の編集者が代わり、「今の子は入社1年目でよくわかっておらず、失礼しました」と自信満々で説明しだした編集者の説明もよくわかりません。その人も入社2年目とか3年目とかいう話でした。

 仕事をしたことがないばかりか、その存在すら知らなかった編集部からのオファーです。どうしたものかと考えて、とりあえず、設定された締切の一週間前に見本となる試し原稿を2本書いて送りました。これを叩き台にして編集者とやりとりをして、彼らの意向に沿う形で書き直していけばいい。テーマは私の得意とする分野だったので(だから編集部も連絡をしてきた)、方向さえわかれば難しくない仕事のはずでした。

 ところが締め切り日を過ぎても返事が来ない。おかしいなあと思い、改めてメールをすると驚愕の返事が返ってきました。

「あなたの原稿はあまりにレベルが低いので、他の方にお願いしました。ついては没原稿料を支払うので、提示した原稿料の半分の金額で請求書を作って郵送してほしい」

 原稿の書き直しや「下手」ということを遠回しに言われたことはありますが、ここまでド正面から言われたのは初めてです。それはいいとしても、他に行くのなら、叩き台の原稿を元に話をしてからでもいいではないか。なにも話もせず、いきなりというのは納得できません。私はその旨を説明し、とりあえず原稿は書いたのだから、あらかじめ約束していた原稿料を支払って欲しいと交渉を始めました。

 ダメですねえ。もともとそういう返事をしてしまう編集者だから、聞く耳を持ちません。何度も電話でもメールでも交渉しましたが、話が通じません。仕方なく、そういうことはしたくなかったのですが、編集長に連絡を取りました。案の定、彼は驚愕しました。もともと私に原稿を依頼するアイデアは彼のもので、部下の編集者に指示したそうな。それが私の原稿でなく他のライターの原稿が用意されたので、いぶかしんでいたようでした。担当編集者は私のやりとりを全て、編集長に報告しておらず握りつぶしていました。叩き台となる私の原稿も改めてメールすると、「この原稿で良いと思います」と約束通りの原稿料を支払うことを約束してくれました。

「それと、お詫びに伺いたいのですが」
「いまお宅の英会話学校のCMで流れるウサギ見ただけでも腹立つので結構です」

 その後親会社の学校ごとなくなりましたが、私に連絡してきた編集者、今どうしているのかなあ。まだ業界で仕事しているのかなあ、たまに想い出すことがある……嘘でーす、こういうときしか想い出しません。

 逆のパターンもあります。貰いすぎたケースです。

 とある週刊誌でルーティンワークの仕事でした。なので原稿料についていちいち説明うけなくてもわかります。ところがあるとき、10万円ぐらいの仕事で25万円くらいが私の口座に振り込まれてきました。

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