大晦日から正月にかけて一緒に過ごすカップルの一大イベント「姫はじめ」である。姫はじめが「1年で最初にセックスすること」と解釈されるようになったのは近世のことで、その行事の由来には諸説ある。
正月用の蒸した硬い飯(おこわ)を止め、初めて柔らかく炊いた「姫飯(ひめいい)」を食べるから「姫はじめ」という説のほか、新年になって最初に火水を使うことを「火水(ひめ)はじめ」と呼んだことにちなむという説もある。
1960年代には、時代を感じさせるこんなエピソードも。
「当時は電話がない家も珍しくなく、彼女との連絡はもっぱら文通でした。年末に届いた手紙の“お正月、○時に神社の鳥居の下で薄桃色の着物で待っています”という文面を見たときは胸がときめきましたし、会える日まで、その姿を想像しました」(71歳の男性・A氏)
しかし着物姿は「姫はじめ」と相性が悪かった。A氏が続ける。
「初めて見る和服姿の彼女は本当に綺麗で、押し倒したいほどでした。かなり強引に彼女を誘ったが、絶対に首を縦に振らない。着物を脱がされると、自分一人では着付けられないからというんです。最近では成人式の日などはラブホテルに着付け師が待機しているというが、当時はそんなサービスがありませんから、泣く泣く彼女を家まで送り届けました」
※週刊ポスト2014年12月26日号