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菅原文太さん 膀胱癌で余命1年半宣告も膀胱全摘拒否の理由

 ベストセラー『がんばらない』著者で諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、昨年亡くなった名優・菅原文太さんと深い交友があったという。生前、菅原さんから病気について相談を受けた鎌田さんが、菅原さんが選んだ「人生の質」について語る。

 * * *
 文太さんと付き合うようになったのは7年前。僕の本を読んでくれた文太さんが、自分の番組に呼んでくれた。彼は熱心な読書家だったから、何かの時に僕の本が目に留まったのかもしれない。

 ゲスト出演した1週間後、文太さんから夕食に招待された。そこで膀胱がんの話を打ち明けられた。

「医者から余命1年半と言われた。でも最後まで、菅原文太らしくいたい。膀胱を摘出して立ちションが出来なくなったら、菅原文太じゃない。カマタさん、何かいい方法ないかな」

 文太さんには文太流のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)を相談できる医者がいなかったのかもしれない。QOLとは、命の質とか、生活の質、人生の質と訳されている。僕の本を読んで、QOLを大事にするカマタに相談したかったのだと思う。

 膀胱を全摘出すれば、おしっこの袋をぶら下げなければならない。それでは「生活の質」が下がる。そうしたら、文太らしくないというのは、よく分かる。いろいろと摘出以外の治療を重ねて、一時は完治したと思われていたが、運悪く再発した。それでも彼はブレることなく、「人生の質」を選択した。

 大好きな日本で何をしなければならないかを真剣に考えた人だった。だからこそ昨年9月には、僕と一緒に福島へボランティアに入り、11月1日には、沖縄知事選に立候補した翁長雄志候補の応援にも駆けつけている。ここでも彼のスピーチは端的でカッコ良かった。

「政治の役目は、国民を飢えさせないことと、戦争をしないこと」

 晩年、文太さんはよく戦争の話をした。

「戦争によって、自分も含めた家族の人生は変わった。だから戦争は二度としてはいけない」

 驚くほど真剣だった。

※週刊ポスト2015年1月16・23日号

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