民主党の岡田克也新代表は党を再生して政権を奪還できるだろうか。残念ながら、その可能性は低い。日本の新聞を読んでも、ずばり核心を突いた記事に出会わなかったが、英紙『フィナンシャル・タイムズ』は「野党が指導者の若返りに失敗し、安倍に安堵感」と書いていた。つまり「岡田ではダメ」と見切っている。私もまったく同感である。
岡田は代表選に立候補したときから、どこかピントがズレていた。「安倍総理と堂々の議論ができる。そのためには自分が適任」などと支持を訴えたが、政治家が総理と堂々と議論するのは、だれだって当然ではないか。
いったい何を言っているのかと思ったら、選挙戦に突入すると「安倍総理である限り、憲法改正の議論はしない」という。「堂々と議論」のはずが一転、真逆に走って議論を封印してしまった。
支離滅裂もいいところである。そもそも政治家は何のためにいるのか。国民に代わって国会で議論するためではないか。最終的には多数決で予算や法律を決めるが、重要なのはプロセスである議論だ。国民は議論を聞いて自分の考えを育てていく。民主主義の根幹を岡田は分かっていない。
岡田が「オレは総理と議論できるぞ」と自慢気に言いながら、封印してしまったのは「とにかく安倍政権が目指す憲法改正には反対」という結論ありき、だからだろう。
これでは民主党は「なんでも反対」だった、かつての社会党と同じになってしまう。筋道の立った論戦はどうでもよく、問答無用で反対を叫ぶのである。初めから話を拒否するのだから、国民の理解を得るどころではない。
■文/長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年 新聞は生き残れるか』(講談社)
※週刊ポスト2015年2月6日号