2015年春闘が幕開けし、今年も給料アップへの期待感が高まっている。2月9日に内閣府が発表した1月の消費動向調査によると、消費者の財布のヒモの緩み度合を示す「消費者態度指数(一般世帯)」は2か月連続で上昇した。
だが、企業であまねく賃金アップが行われ、消費意欲が再び旺盛になってきたと考えるのは早計だ。第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏がいう。
「消費動向が上向いているのは、消費増税の悪影響が一巡したことと、雇用環境が改善してきたことが主な要因。収入の増加が直接購買力に結び付いているとはいえません。
賃上げも大企業が中心で、中小企業への波及効果はまだ見られません。特に5~29人の小規模企業は、小売業や飲食サービス業、建設業など、より生活に密着した業種の比率が高く、個人消費が活性化しない限りは賃上げもできない状況が続いています」
今年の春闘も昨年同様、円安メリットを享受した大企業の経営者は賃上げに前向きだが、消費低迷や原材料高に苦しめられた中小企業は慎重姿勢を崩さない。
大企業が儲かれば巡りめぐって中小企業に「富」が行き渡る、いわゆる“トリクルダウン理論”に否定的な見方が広がっているのは、所得拡大→消費拡大への好循環が限定的すぎるからに他ならない。
それでも、「できる企業から賃上げをしなければ全体的な消費の底上げは見込めない」と、前出の熊野氏は指摘する。
「大企業が地道に賃金のベースアップ幅を広げて消費全体をうまく持ち上げれば、時間はかかっても中小企業への波及効果も表れるはず。『大企業だけ給料が上がるのはおかしい』と言っていても、経済原理に反するばかりで何も始まりません。
幸い、直近の原油価格の下落により、地方の小売り・サービス業は間接的に恩恵を受けています。それが企業収益の増加につながり、ジワジワと賃上げに動く中小企業も昨年より出てくるはず。今年の夏ごろには消費者の購買力が高まり、実質賃金もプラスの伸びに転じるのではという期待感はあります」(熊野氏)