2月18日午前9時、東京・秋葉原の家電量販店がオープンすると同時に2台の大型バスが店正面の歩道に横づけされた。ドアが開くと、中国人観光客が次々と店内へなだれ込んだ。約70人の大集団だ。お目当ては家電売り場。制服姿の中国人スタッフ20人が接客にあたった。
「これを10個ほしい」「別の色はないのか」。売り場には中国語の大声が飛び交い、騒然となった。
北京市から来た妻と幼児連れの40代の男性は“戦利品”を自慢げに見せた。
「買い物の予算は2万元(約40万円)。今日は炊飯器(約13万円)と妻の美容マッサージ機(約2万円)を買いました」
長蛇の列ができたレジでは、10万~40万円台の高額決済が次々と行なわれた。
午前10時、戦場さながらだった売り場から人の波が引き、たくさんの家電製品を抱えた中国人客が歩道を占拠。日本人の歩行者たちは彼らを横目に見ながらよけて通っていった。
中国の旧正月「春節」(2月18~24日)の連休前には多くの会社でボーナスが支給されるため、懐が暖まった大勢の中国人が日本に買い物目当てでやって来る。ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎・上席研究員が語る。
「2年半ぶりとなった昨年11月の日中首脳会談あたりから、訪日ツアーが多く組まれはじめました。昨年の中国人1人当たりの旅行中の支出額は平均23万円ですが、今年はそれを大きく上回ると予想されています」
※週刊ポスト2015年3月6日号