「ドメスティック・バイオレンス(DV)」と聞けば、多くの人は妻に暴力を振るう夫の姿を思い浮かべるだろう。
しかし今、世間ではその逆、妻から夫へのDVが深刻化している。妻から繰り返される暴言や、殴る蹴るの暴行に耐えかねて相談窓口に駆け込んでくる男性が急増しているのだ。
「身近なもので叩かれます。フライパンで殴打された時は目の前に星が飛びました。
先日は寝ていたら、急に息苦しくなって溺れている感覚に襲われて飛び起きた。目に入ったのはニッコリしながらヤカンで私の顔に水を浴びせかける妻の顔でした。目の奥は笑っていませんでした」(60代自営業)
50代の会社員男性は、妻からの暴力で腰を痛めてしまった。
「些細なことを妻に責め立てられてから、しばらくは夫婦の寝室に土下座して入室していました。その際にジャンプして腰を踏みつけられたり、思い切り何度も蹴られたりした」
それが続いたある日、腰に激痛が走った。歩くのも困難なほどの痛みだった。
「でも保険証を妻に取り上げられていて、なかなか医者に行けなかった。DVが表沙汰になるのを妻が用心していたのかもしれません。用事があって実家に電話していると“告げ口しただろう”と腰を蹴られましたからね。
でも仕事に支障が出てしまうからと、妻にまた土下座して医者に行く許可をもらい、ヘルニアと診断されました。最近は布団から出るのも辛くて、毎朝必死の思いで通勤しています」(50代会社員)
40代前半の会社員のケースでは、失業を機に妻が狂暴化していった。
「必死で職を探しているのに、帰宅したら子供の前で“ダメ人間が来た”と罵られる。何かを頼むと“ハア~”という大きなため息と、壁をドンと蹴る音が聞こえてくる。その後、無事に再就職できたので妻も変わると期待したが、エスカレートする一方でした」
言い返せばコップや椅子が飛んでくるようになり、投げつけられた携帯が目を直撃し、大きく腫れたこともあった。そしてついに深刻な事態を迎える。
「ある日仕事を終えて深夜に帰宅したら、玄関に切り刻まれた私の服が複数投げ捨てられていた。台所に行くと、テーブルの上に包丁がズラリと並べられ“死んで”というメモ書きが添えられていた。あまりのショックと恐怖に、うずくまって嗚咽しました」
こうした妻の暴力が事件に発展した事例もある。
2013年7月、三重県に住む30代の妻が、40代の夫に飲料を買ってくるように頼んだが、品切れのために手ぶらで戻った夫に腹を立て、ノートパソコンで頭を殴りつけて夫は意識不明の重体になった(妻は傷害罪で現行犯逮捕)。
ここまで来ると、もはや家庭内で耐えられるレベルではない。
※週刊ポスト2015年3月6日号