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サリン事件 作家・麻生幾氏が明かす「知られざる捜査の内幕」

 オウム真理教が起こした地下鉄サリン事件から3月20日で20年。事件の2日後には、山梨・旧上九一色村の教団施設へ強制捜査が入り、約2か月後、教祖・麻原彰晃(松本智津夫・現死刑囚)が逮捕された。現在、麻原ら幹部13人の死刑と5人の無期懲役が確定。裁判によって、東大を筆頭とした高学歴の教団幹部たちが、麻原の洗脳によって凶行へと突き進んだ過程が明らかになった。

 強制捜査初日には2500人以上が動員されるなど、日本の公安・警察が全力で戦いを挑んだ歴史的事件。『極秘捜査』の著書がある作家・麻生幾氏が、知られざる捜査の内幕を明かした。

 * * *
 20年の月日が、これまで語ることを許されなかった記憶を溶かしてゆく。それは例えば、警察vsオウムの戦いもそうだ。語り尽くされた感がある言葉だが、20年前の、あの時の“壮絶”さは未だに多くのことが語られていない。

 3月20日の夜。地下鉄サリン事件発生の夜。東京・霞が関の警察庁。壮絶な思いで集まった幹部たちが、2日後に予定されている史上最大の強制捜査の最終確認を急いでいた。

 その頃、都内のある場所で、公安警察官と協力者(モニター)との接線(セッセン)が密かにもたれた。オウム真理教の中枢に位置する男は、これまで繰り返してきた〈供述〉を口にした。

「昨年(1994年)6月、土谷正美(現死刑囚)の実験棟でサリンを生成。一部を松本サリン事件で使用し、製造プラントは破壊した。しかし、その時生成したサリンは残っており、隠匿されている」

 警察庁首脳部は、この〈供述〉を最もレベルの高い秘密に指定。〈供述〉はもとより、男の存在ですら、警察庁の数人の最高幹部しか知らされていなかった。

 たった一人のモニターの〈供述〉は、警察庁の“オウムとの戦い”の極秘の基本方針となっていた。オウムは強制捜査後も、隠匿されたサリンを使い、数百台のサリン攻撃車両を都内に走らせ、空からはラジコンヘリによってサリン攻撃を行う──その前提に立ってすべての作戦を策定していった。強制捜査の約一ヶ月前から始まったオウム内部の協力者獲得の作業は壮絶だった。半年後には、麻原彰晃逮捕後の組織内部の権力闘争さえ把握した。

 冒頭の会議と同じ時間、警察庁から車で5分もかからない築地警察署。そこでの光景も語られざる記憶だ。

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