国内

警察 「前科」がある自衛隊部隊のクーデターを現在も警戒中

 イスラム国と称するテロ組織(ISIL)による邦人殺害事件を受け、安倍晋三首相は「自衛隊による在外邦人救出のための法整備」に意欲を示した。そうした中、自衛隊の中には有事への意識の高い隊員も増えている。だが、その種の隊員へ警察が警戒の目を向けているのだという。ジャーナリストの田上順唯氏がレポートする。

 * * *
 終戦記念日の8月15日。靖国神社の参道に、モスグリーンの制服に身を包んだ現役陸自隊員の集団が姿を見せた。引き締まった表情で拝殿へと歩を進める彼らに向け、物陰からカメラを向けるのは“マル自”と呼ばれる公安警察「自衛隊監視班」の職員だ。

 警察が自衛隊内部の「右翼的な思想を持つ隊員」をマークするのは、自衛隊に対する根強い不信感があるからだという。

「戦前に発生したクーデター『五・一五事件』では警視庁が襲撃され、『二・二六事件』では警察官5名の殉職者を出しています。警察は現在でも『自衛隊部隊によるクーデター』を警戒している。馬鹿げた話かもしれませんが、“前科”がある以上、可能性はゼロではないと考えているのです」(警視庁関係者)

 自衛隊内部でも、政治的思想を持つ隊員の調査は日常的に行なわれている。

「憲法改正のための自衛隊決起を訴え、陸自総監を監禁し市ヶ谷駐屯地で自決した三島由紀夫の事件では、多数の自衛隊員の協力者がいたと言われています。基本的に自衛隊内部の調査は左翼思想や新興宗教に関係する隊員が対象ですが、警察から持ち込まれた資料を基に、右翼思想を持つ隊員が調査対象になることもある」(防衛省関係者)

 30代半ばの2等陸曹は、自衛隊員が置かれた現状に複雑な心情を隠せずにいた。

「もちろん好んで戦争をしたいというわけではありません。われわれは訓練を通じて武力が圧倒的な破壊と破滅をもたらすことも十分に承知している。ただ、外野に何を言われようと自衛官個々の戦闘力の底上げは国民と自分たちを守るためにも必要なんです。特に、部隊の第一線で国防を担う20代後半から30代前半の陸曹には、そうした自負心を持つ人間が非常に増えています」

 戦争への脅威が現実味を帯びる中、国防を担う自衛隊員の意識が大きく変わろうとしているのは間違いない。

※SAPIO2015年4月号

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン