本誌は4号連続で日本の臨床医の学会が設定するコレステロール摂取制限や基準値の科学的根拠が曖昧であることを指摘し、大きな反響を呼んでいる。他メディアも恐る恐る後追い報道を始めている。今回、海外の権威の見解を取材すると、改めて「日本の常識が世界の非常識」であることが浮かび上がった。
フランス国立科学研究センター正規研究員で、欧州心臓病学会のメンバーを務めるミッシェル・ド・ロルジュリル氏(フランス・グルノーブル第一大学医学部心臓栄養部長)はこう語った。
「コレステロールは長く病気の原因だと責任をなすりつけられてきた存在ですが、現在では(心血管疾患などの)病気とは関連がないと考えられています。むしろコレステロールは高すぎることよりも、低すぎる方がより危険なのです」
本誌は日本人を対象とした大規模調査で、コレステロール値が低い方が総死亡率は高いことを報じてきたが、欧州の専門家も同じ認識を持っていた。
日本では動脈硬化学会のガイドラインにより、厳しいコレステロールの摂取制限(1日200㎎未満)が設けられ、健康診断で使われる血中コレステロールの診断基準値(LDLが140mg/dl以上は病気、120mg/dl以上は指導対象)も厳しい数字が設定されてきた。
基準値についてロルジュリル氏はこう断言した。
「摂取制限に関しては、具体的な数値を挙げるに足る科学的根拠はありません。日本の血中LDLの基準値についても、正確なエビデンスに基づくものとはいえない」
同氏が強調するのは「コレステロールの値を××にすれば健康になる」という日本では“常識”とされてきた発想そのものが間違っているという点だ。