ライフ

ひきこもり息子と7年ぶりに対話 全ての歯が虫歯になってた

「後悔する者にのみ、許しが与えられる」とはイタリアの詩人、ダンテ・アリギエーリの言葉。失敗や過ちを犯すことは誰にだってある。大切なことはそれと向き合い、心の底から後悔すること。そうやって初めて新しい自分を得ることができる。58才パート女性が語った7年ぶりに対話を果たしたひきっこもりの息子との心のふれあいのストーリーを紹介する。

 * * *
 私が親の介護に追われていた時のこと。ある日、中学校から、息子が何日も登校していないと連絡がきました。朝はちゃんと家を出ていたのに…。でも実は、息子は公園で時間を潰して、夕方、家に戻って来ていたのです。

「どうして学校に行かないの?」

 私がそう問い詰めると、息子は何も言わず、自分の部屋へ。以来、引きこもるようになってしまいました。

 夫が話しかけても、息子は鍵をかけた部屋から出てこない。ドア越しに厳しく詰め寄ると、部屋の中から物が壊れる激しい音が聞こえました。中学にはほとんど行かないまま息子は卒業。高校にも行きませんでした。

 私や夫と顔を合わせることなく、私たちが外出している時や寝ている時に冷蔵庫にある料理を食べていたようです。

 しかし、息子が20才になったある日、「歯が痛い」と部屋から出てきました。歯医者に連れていくと、全ての歯が虫歯になっていて、先生が絶句するほどでした。病院に付き添い、7年ぶりに息子と話す機会が訪れました。気まずい空気が流れましたが、私のほうから「どうして学校に行かなかったの?」と改めて尋ねたんです。

 そして初めて、息子が中学時代に教師も加担する悪質ないじめを受けていたことを知りました。

「どうして言ってくれなかったの?」

 私がそう聞くと、息子は「聞いてくれなかった」と怒鳴り、「母さんのせいでおれの人生は滅茶苦茶だ!」と、テーブルを叩きました。いつの間にか身長は私や夫を追い越し、大きくなった息子の苦しみにその時まで気づこうともしなかったのです。親の介護に精一杯で、私は息子を何も見ていませんでした。私は、「ごめんね、一緒にやりなおそう」と息子を抱きしめました。

 息子はただ黙っていましたが、私を振り払うことはしませんでした。息子は今でも外出することはありません。でも、居間に顔を出すようになりました。今度こそ息子のSOSを見逃さないよう、寄り添って生きていきます。

※女性セブン2015年4月23日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
韓国2泊3日プチ整形&エステ旅をレポート
【韓国2泊3日プチ整形&エステ旅】54才主婦が体験「たるみ、しわ、ほうれい線」肌トラブルは解消されたのか
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン