ダイハツの「コペン」やホンダの「S660」など、小型で軽量なスポーツカーが登場し、ジワジワと注目度を高める中、このカテゴリーでパイオニア的存在のクルマが満を持して新型モデルを発売した。マツダの「ロードスター」である。
「ロードスターはマツダブランドの象徴。『人馬一体』の走る楽しさやオープン走行の爽快さ、手頃な価格などが高く評価され、四半世紀を超えて愛されてきました」
マツダ社長兼CEOの小飼雅道氏がこう自画自賛するほど、ロードスターは“走り好き”の間で根強い人気を誇ってきた。
初代ロードスターはマツダが1996年まで展開していたプレミアムブランド「ユーノス」のバッジで売り出された。「いまだに初代を乗り続けているファンも多い」(都内の中古車販売店)ことから、まさにマツダの歴史とともに生き長らえてきた“鉄板ブランド”といえる。
そして、1989年の発売以来4代目、先代より10年ぶりにフルモデルチェンジさせた新型モデルは、先代よりさらに100kgも軽量化したボディと力強い走り、240万円台~という手頃な価格設定が売り。「昔のロードスターを知らない若者にも気軽に乗ってもらいたい」と、マツダ幹部も今後の売れ行きに期待を寄せる。
台数が見込めるファミリーカーではないため、日本での月間販売計画は500台と控えめだが、発売前から3300台を超える予約受注があり、日本だけでなく世界35か国以上でも順次販売していく予定だという。
だが、ロードスターは販売台数の規模以上に、マツダが今後進むべき方向性を見極めるうえで大きな指標になってくる。
「マツダはエンジン、トランスミッション、ボディ、シャシーなどの開発で環境や安全性能を追求した『スカイアクティブ技術』を新型車のラインナップに次々と取り入れ、わずか3年の間に主力車種を全面改良させてきた。クルマのデザインも高級感を重視した『魂動(こどう)デザイン』と称してマツダ車のイメージ統一を図り、今回のロードスターで新世代モデルが一通り出揃った」(経済誌記者)
ブランドイメージをがらりと刷新させたことで、マツダ車に対する評価が高まっているのは事実だが、「新生マツダ」の付加価値をどこまで浸透させ、どれだけ辛抱強く貫けるのかは未知数だ。
自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が指摘する。
「マツダはドイツ車のアウディのような高級ブランドを志向し、少し値段は高めでも期待を裏切らないクルマづくりに自信を深めてきた印象があります。販売力ではなく、クルマの良さで分かってもらおうという、いわば“王道”の戦略で勝負しています。
ただ、例えば『アテンザ』のようなプレミアムセグメントを購入するユーザーは目も肥えていますし、ちょっとした乗り心地にも敏感。そういう意味では一番難しい方法で大手メーカーに挑んでいるともいえます」