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一流料亭の料理人や寿司職人が愛用 親子4代で製作の玉子焼鍋

一流料亭の料理人も愛用する玉子焼鍋

 東京の下町・足立区にある大正初期創業の中村銅器製作所は、4代にわたり銅鍋を作製し続けている。

 いちばん人気の玉子焼鍋は、プロの料理人たちに愛用され、代々受け継がれることも多い。焼け落ちた取っ手の修理や、剥げた錫の塗り直しを持ち込まれることもしばしばだ。

「銅素材は熱伝導性と保温性に優れ、料理道具に適しています。ムラなく均一に熱が通るため、焼きムラや焦げつきが生じにくい。鉄やステンレス、シルバーストーンの鍋などと使い比べていただくと違いは歴然。玉子焼は、外はふんわりふっくら、中はしっとり焼き上がりますよ」と語るのは、3代目の中村恵一さん。

 玉子焼鍋は、まず銅板を折り曲げ、四角を溶接でつなげ、内側に錫を焼きつける。銅鍋に錫を焼きつけるのは緑青の発生を防ぐためで、メッキよりも厚く仕上がり、耐久性も上がる。焼きつけに使用している年季の入ったガス台は、家庭用のガスコンロだ。

「錫を溶かすために銅鍋を230℃まで熱し、銅鍋に錫を焼きつけ続けます。銅鍋の温度が上がりすぎると、今のガスコンロは自然に火が落ちてしまうので、作業が中断されるのが残念です。家庭用としては、火事を防ぐために必要な機能なんでしょうが…。ガスコンロは酷使するので半年ごとに買い替えています」

 と、ほほ笑みながら中村さんは黙々と作業を続ける。また、作業所にある窓はほぼ閉め切って作業を行う。

「錫を伸ばすのに使う真綿が風で流れて、火がついてしまっては大変ですからね。夏場は43℃くらいにはなります」

 プロ御用達の銅鍋は過酷な作業場で作られているのだ。使用後は洗剤を使わず、スポンジなどで水洗いし、油をなじませて保管してほしい。

「せっかく鍋になじんだ油分を洗い流すのはもったいない。そのように保管すれば使い込むほど状態がよくなります」

 大切に使いながら育てる、一生ものの鍋。親から子へ譲り渡す鍋としてもおすすめだ。

※女性セブン2015年6月18日

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