安保法案に不安を覚える国民は少なくないだろう。そんな中、安保法案に反対の意を表明したのは元衆議院議員の山崎拓さん(78才)だ。
反対の声を旗幟鮮明(きしせんめい)にする山崎さんは、2003年、イラク特措法を進めた中心人物だった。それがなぜ、安保法案に反対の立場を示しているのだろうか。話を聞いた。
「当時私は自民党幹事長として、米国のパウエル国務長官から『イラクが大量破壊兵器を保有している。除去する必要がある』という説明を受け、小泉首相に“イラク戦争を支持するべきだ”と進言し、自衛隊を派遣できるようイラク特措法を成立させました。
しかし、大量破壊兵器は見つからなかった。自衛隊の派遣で死者はひとりも出ませんでしたが、日本が強い軍事力を保持する方向に舵を切った転換点ではないかと感じています。今、事態はさらに進んで、自衛隊をさらに海外で貢献させようとしている。この動きには強い危機感を持ちます。
なぜなら、これまでの自衛隊派遣と、安保法制によって可能になる後方支援は全く別物だからです。
これまでは憲法で、武力行為が禁じられていたから、派遣されても戦闘地域では活動できなかった。しかし、安保法制によって“戦闘区域に行かない”というルールが、“戦闘を行っている区域には行かないが、それ以外で後方支援をする”に変わった。後方支援の中には、前線への弾薬補給なども含まれる。
安倍首相は国会で、“危険になったら安全な方に移動する”と言っていますが、そんなこと現実的に考えてできるわけないでしょう。中東の砂漠で、どこに安全な場所があるんですか。移動する場所もないし、移動するにしたって時間がかかります」
さらに山崎さんは、「安倍首相は、国民の命を危険にさらすことの重大性をわかっていない」と続ける。
「この法律を作ったのは主に外務省と防衛省の役人で、安倍首相自身は1行も法律に手を入れていません。安倍首相がやりたかったことは、歴代の首相ができなかったことを自分がやってみるということ。外務省は外交手段のひとつとして自衛隊を海外に送りたい。だから、安倍首相の気持ちを役人が利用したんです。
安倍首相は、この法改正の危険性をわかっていない。“自分はすごいことをやっているんだという名誉心、そして強い国を作っている、日本国民の平和と安全を守っている”と勘違いしているのです」
※女性セブン2015年8月13日号