今年2月の「春節」の時期は多くの中国人観光客が来日し、「爆買い」が話題になったが、夏本番を迎え、また多くの中国人が日本に「爆買い観光」にやってくる。化粧品や炊飯器と並んで中国人に人気なのが、日本製の「温水洗浄便座」だ。
品質の良さは中国でも折り紙つき。今年3月の全国人民代表大会(全人代)でも日本の温水洗浄便座を取り上げ、李克強・首相が「中国の産業は高度化が必要だ」と中国企業の品質向上を求めたほどだ。だが同じ日本製でもメーカーによって人気に差があるという。
「どれも同じような機能や種類に見えますが、中国人客に人気が高いのは圧倒的にパナソニック製です。6万円前後の商品が売れ筋で、1人で4~5台買うお客さまもいます」(家電量販店店員)
人気の理由は手厚い「アフターケア」だ。
「温水洗浄便座の取り付け方なんて分かりません。でもパナソニック製なら安心なんです」(中国人観光客)
パナソニックは中国各地に代理店があり、商品購入後の取り付けやメンテナンスを積極的に行なっている。創業者・松下幸之助氏が1970年代にトウ小平氏に請われていち早く中国進出に踏み出したことは有名だが、それ以来のネットワークが役立っているのだ。
パナソニックも手応え十分の様子である。
「中国からのお客様向けの温水洗浄便座は今年4~6月で、前年比約6倍の売れ行きです。当社の販売ネットワークを利用した現地での無料設置サービスが他社との差別化になり、人気につながったと思います。
温水洗浄便座は中国ではまだ一般に普及していないので、様々な面での『お手伝い』が大切です。電気が通っていない家では、別料金で電気工事も行なっています」(パナソニックブランドコミュニケーション本部広報部)
パナソニック製品の中国人向けパンフレットには、〈日本限定機種〉との宣伝文句が誇らしげに躍る。
中国という巨大市場でシェアを得るために必要なのは、高性能の商品だけではない。パナソニックが示した日本流のアフターサービスが今後の「爆買い」競争の勝敗を分けそうだ。
※週刊ポスト2015年8月14日号