昨今のプロ野球では米大リーグの影響もあり「先発投手は100球まで」という球数制限が当たり前になりつつあり、リリーフ陣を駆使する野球を各チームが実践している。この風潮は完投を連発し、通算350勝をあげた米田哲也氏(77)の目にはどう映っているのか。米田氏が語る。
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中6日で投げていて故障する投手がいる、という事実には本当に唖然とします。原因はたった一つ。投げ込み不足です。
キャンプを回っていても、ブルペンで1日に150球投げる投手はいません。練習で100球ほどしか投げていないのに、試合で完投しようというほうが無理ですわ。1イニングを15球で収めたとしても、9イニングでは135球。試合で完投できる展開になっても、135球が「未知の世界」では話にならんでしょう。
それに、球数を投げないとコントロールもつきません。今の投手はラクして投げているんです。自分の肩の限界を知らない。高校時代は限界に近いところまで投げていたのに、プロに入ってだんだん退化させているのが、今のピッチャーなんですよ。
私にいわせれば、限界を見極めるぐらいの投げ込みをやれば、中継ぎや抑えなど不要です。全員が先発完投できます。高い給料を払って、1イニングだけ投げさせるような継投策は止めるべきです。だって、それまで必死で長いイニングを投げている先発ピッチャーがバカみたいじゃない。ローテーションピッチャーが重視されていないのが、今のプロ野球なんです。
こういうと、「リリーフピッチャーは年間50試合以上投げるから負担が違う」なんていう人がいる。僕なら1イニングでいいといわれれば143試合全部で投げてやりますよ。僕だけじゃなくて昔のローテーション投手なら誰でも投げられますって。
●よねだ・てつや/1938年、鳥取県生まれ。阪急のエースとして、19年連続2桁勝利を記録。歴代1位の949試合、同2位の350勝・5130投球回をマーク。その驚異的なスタミナから「ガソリンタンク」の異名をとった。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号