手塩にかけて育てた娘の彼氏。どんな男を連れてきても、なかなか納得いかないというのが、一般的な父親の心情というもの。一方、“野人オヤジ”こと小説家・鈴木光司氏は、長女・美里さんとの共著『野人力 オヤジが娘に伝える「生きる原理』(小学館)の中で、「彼氏と早く旅行へ行け」と勧めている。その真意はどこにあるのか。美里さんが知られざる父のエピソードを紹介する。
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私のやることに「NO」と言わない父ですが、時折、しつこいぐらい口を出してくることがあります。それは勉強のことでも、日常生活のことでもありません。「男」についてです。
「娘が彼氏とどこまで進んでいるか心配な父親」というプロトタイプを想像しないでくださいね。父は世間のお父さんがするような心配は一切しません。その逆です。うちの父は、「関係が進んでいないこと」のほうを心配するのです。
「いいか、いい男はすぐに売れてしまうぞ。だから20代のうちに、いい男をつかまえてしまえ!」
彼氏ができたことが父にバレると、ふた言めには、「一緒に旅行に行け!」
婚前旅行をそそのかすのです。
「男はな、一緒に旅をして、一緒に夜を過ごさないとダメだ。オシャレなレストランで一緒に飯喰ったって、何もわかんねぇぞ」
受け流していると、しまいには持ち前の行動力で、宿を押さえしまうのです。
(美里)
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娘にこうした態度をとる理由を、父・光司氏は次のように解説する。
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娘よ、婚前旅行を勧められたごときで、赤面している場合じゃない、ということがわかっただろうか?
コミュニケーションスキルは、場数を踏まなければ養えない。だったら四の五の言わずに、「いいな」と思った男と旅行に行け。男と女、別の性がパートナーシップを結んで協力し合ったときに、大きな力が生まれる。お前をもっと大きくするだろう。
目指すべきは「箱入り娘」ではないのだ。人間関係の達人なのだ。モテモテの人生を歩むのだ、娘よ。
(光司)
※鈴木光司・鈴木美里/著『野人力 オヤジが娘に伝える「生きる原理』より