中国の景気後退不安をきっかけとした株安が世界を揺さぶった。お盆前の11日には2万1000円に迫る勢いだった日経平均は1万8000円を割り込んだ。しかし、日経CNBCコメンテーターを務める平野憲一氏(ケイ・アセット代表)は、「急落は一時的なものだ」と指摘する。
「今回は中国経済の失速に伴って原油をはじめ商品市場が大きく下落する中、商品相場で損失を抱えたヘッジファンドなどが日本株に空売り攻勢を仕掛けてきたことが大きな要因です。
東証の売買に占める空売り比率が30%台後半という記録的な水準にあるのが何よりの証拠。空売りというのはいずれ買い戻すことが前提の取引なので、それだけ大きな買いエネルギーが積み上がっていると見た方がいい。しかも、空売り勢力は元々買い材料に乏しい8月というタイミングを狙って仕掛けてきたわけで、9月以降に買い材料が増える前に買い戻す可能性が高い」
あくまで短期的な急落にすぎないというのだ。ただでさえ日本株は「世界的に見れば割安」といわれてきた。
「日本株のPER(株価収益率)は今回の暴落で14倍台に下がっています。一方で企業業績は好調で、この9月期中間決算で通期(2016年3月期)予想を上方修正する企業が出てくるのは必至でしょう。企業業績の伸びしろがそれだけ見込める以上、現在の水準は非常に割安といえます」(冨田康夫・日刊株式経済新聞編集長)
これを世界が見逃すわけがない、と武者陵司氏(武者リサーチ代表)は語る。
「直近の世界各国の株価をドルベースで見ると、軒並み株安、通貨安で1割以上も下げているのに対し、日本は株価が11%減でも通貨が5%強くなったために、差し引き6%しか下がっていない。日本株は世界最良のパフォーマンスを上げている。これは企業の増益率に比べて株価が安いから。パニックが収まれば、グローバルマネーが日本に集中するのは間違いない」
世界同時株安によって図らずも日本株の高いコストパフォーマンス、回復力、安全性が証明され、世界の投資家に再び注目されているとの見方である。
※週刊ポスト2015年9月11日号