抗日戦争勝利70周年を記念した軍事パレードが9月3日、中国・北京で行なわれたが、市内はさながら戒厳令のようだった。パレードが行なわれる大通りに面した主要なホテルは営業を停止。そのほか、8月中旬からドローンの販売が停止され、小型ヘリや熱気球などの飛行も禁止された。前日からは市内の約260路線のバスが運休になり、当日午前は北京の2つの空港で民間機の発着がストップ、地下鉄の駅も封鎖された。外務省関係者はこういう。
「中国政府は8月に入ったあたりから一気に警戒レベルを上げた。通り沿いのホテルにしても、今年前半の時点では9月3日の予約が可能だったが、夏場になってから『その日は営業しない』と予約客に一方的な通告を行なっている。海外要人を何十人も招く以上、過激派によるテロなどへの警戒を怠らないのはわかるが、さすがに過剰だ。まるで、習主席自身が命を狙われていて、襲撃に怯えているようだ」
警戒レベルが一気に上がったと指摘される時期は、中国で社会不安が高まる事件が立て続けに起きたタイミングと重なる。
まずは経済の失速だ。6月中旬から中国株は大暴落を始めた。今まで株式市場は政府のコントロール下にあり、中国当局は個人投資家に「株は上がる」と喧伝し、株式バブルを起こしてきた。国民はそれを信じて多額の借金をしてまで株に突っ込んでいたため、暴落によって阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっている。
8月12日には、天津市の化学工場で大爆発事故が起きた。天津市当局は158人の死者が出たと発表しているが、実際は1000人を超えるという見方もある。そうした事態への対応に、習政権は躍起になった。
株価を反転させるために、豊富な外貨準備を投じた力ずくの介入に乗り出し、暴落している70%の銘柄を売買停止にし、空売りをかける者を逮捕するという、およそ自由市場では考えられない措置まで採った。さらに8月11日には人民元の切り下げを敢行。輸出企業の業績を底上げするため、強制的に人民元安へ誘導した。この間、中国当局は為替市場と株式市場の買い支えに約4000億ドル(約48兆円)もの資金を投入したとされている。